税務調査では何を見せなければならないか?
※2014年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
よくある税務調査の疑問に、
「税務調査において、調査官に提示しなければならない
ものの範囲は、どこまでなのでしょうか?」
というものがあります。例えば、在庫の状況。
棚卸資産を1つ1つ数えるわけではないにしても、
在庫の管理場所は求められれば見せる必要があるのでしょうか。
また、個人事業主であれば個人の通帳、法人であれば
社長個人の通帳を求められることがありますが、
これも見せる必要性があるのでしょうか。
まずは、質問検査権を規定している条文の確認です。
(カッコ書きをあえて省略しています)
国税通則法第74条の2
国税庁、国税局若しくは税務署又は税関の当該職員は、
所得税、法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、
次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、
その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、
又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる。
ここにおいて、税務調査で提示・提出しなければならないのは、
「その者の事業に関する帳簿書類その他の物件」とされています。
まずここで、「その者の事業に関する」と規定されていますから、
たとえば、個人事業主に対する税務調査で、
事業用と生活費用の通帳が明確に分かれている場合、
生活費用の通帳を見せる必要性がないことがわかります。
これは法人も同じで、法人と役員が金銭の貸借をしている場合
などを除いて、個人用の通帳を見せる必要はありません。
(あくまでも「事業に関する」ものだけです)
これは、国税庁のサイトで公開されている
情報の中にも、明記されています。
「税務調査手続に関するFAQ」(一般納税者向け)
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm
問7 法人税の調査の過程で帳簿書類等の提示・提出を
求められることがありますが、対象となる帳簿書類等が
私物である場合には求めを断ることができますか。
【回答】
法令上、調査担当者は、調査について必要があるときは、帳簿書類等の
提示・提出を求め、これを検査することができるものとされています。
この場合に、例えば、法人税の調査において、その法人の代表者名義の
個人預金について事業関連性が疑われる場合にその通帳の提示・提出を
求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものと考えられます。
調査担当者は、その帳簿書類等の提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、
ご理解を得られるよう努めることとしていますので、調査へのご協力をお願いします。
この質疑応答で勘違いしてはならないのは、あくまでも
「個人預金について事業関連性が疑われる場合」の話であって、
この前提がなければ個人の通帳を見せる必要など一切ありません。
また、通達では下記のように規定されています。
国税通則法調査関連通達1-5
(質問検査等の対象となる「帳簿書類その他の物件」の範囲)
法第74条の2から法第74条の6までの各条に規定する
「帳簿書類その他の物件」には、国税に関する法令の規定により備付け、
記帳又は保存をしなければならないこととされている帳簿書類のほか、
各条に規定する国税に関する調査又は法第74条の3に規定する
徴収の目的を達成するために必要と認められる帳簿書類
その他の物件も含まれることに留意する。
ここにいう「調査の目的」とは、堅苦しい言葉で書くと、
「正しい課税標準等または税額等を確認すること」
となりますから、所得計算に必要なものは含まれ、
それ以外は含まれないと解釈することが可能です。
国税の内部規定には、下記のように書かれています。
「税務調査手続等に関するFAQ(職員用)【共通】
平成24年11月 国税庁課税総括課」
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問1-26
「調査の対象となる帳簿書類その他の物件」における「その他の物件」
というのはどのようなものを指すのか。
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(答)
「その他の物件」とは、例えば、金銭、有価証券、棚卸商品、不動産(建物・土地)
等の各種資産や、帳簿書類の(作成の)基礎となる原始記録などの当該調査又は
徴収の目的を達成するために必要な物件が該当します(手続通達1-5)。
冒頭に書いたように、在庫は?と聞かれれば、
棚卸の金額によって所得金額は変わりますから、
このFAQの通り、調査官に見せなければなりません。
法律に定める「その者の事業に関する帳簿書類その他の物件」
については、いわゆる不確定概念で、
明示はできませんが、上記の判定基準で、
これは「見せる」「見せない」を判別してください。
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