税務調査で従業員不正が発覚した場合の対応:第4回
※2024年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガから引続き、税務調査で
従業員不正が発覚したケースを解説しますが、
今回が最終回で「重加算税の分岐点」を取り上げます。
前回の解説では、取締役(役員)による不正は
法人に重加算税が課される一方で、従業員不正に関しては
何が判断要素になるのか明示していませんでした。
従業員不正で法人に重加算税が課されるのか、
その分岐点(判断要素)は多岐にわたりますが、
最も重要な要素は「不正を行った従業員が重要な業務を担当していたか」です。
例えば、(役員ではない)経理担当者が行った不正は
「法人の金銭を動かすことができる」という観点から、
重要な業務を担当していたと判断され、
法人に重加算税が課されるケースがほとんどです。
一方で、前回取り上げた裁決事例
「元従業員が請求人の仕入れた商品を窃取したことによる
当該元従業員に対する損害賠償請求権を益金の額に算入すべきとした事例」
(令和元年5月16日裁決)
https://www.kfs.go.jp/service/JP/115/11/index.html
のように、特段の権限もない一般社員が行った不正は
法人に重加算税が課されないケースが多いです。
さて、次に重要な分岐点(判断要素)となるのが、
「予見性・認識可能性・注意義務」の論点で、
この要素によって従業員不正で法人に重加算税を
課される事案が現実的には多いはずです。
この要素を簡単にいうと、
・法人が管理監督責任を果たさず、
業務を従業員に任せきりにしていた
・不正チェックなどの内部管理体制が不十分
・不正を発見しようと思えばできた状況
等であれば法人に重加算税が課されるというものです。
最新の公開裁決事例で下記があります。
「請求人の従業員が工事業者と通謀して
虚偽の工事完了日を記載した工事完了報告書等を
作成した行為は、事実の仮装に該当するところ、
当該従業員の行為は、請求人の行為と同視でき、
重加算税の賦課要件を満たすとした事例」
(令和6年1月10日裁決)
https://www.kfs.go.jp/service/JP/134/02/index.html
この裁決事例では、仮装行為を行った従業員に
重要な地位・権限がなかったのですが、
●不正の事実を把握して是正措置を講ずることは可能であったと認められる
●法人における管理・監督体制が十分であったとは認められない(不十分だった)
として、法人に重加算税が課されています。
この事実認定も裏を返せば、
法人が「努力していたが気付くことができなかった」という
主張が可能なのであれば、従業員不正で重加算税を
課されない可能性が高まります。
例えば「与えている業務外の不正である」
「業務フローはあるが、そこから外れた行為である」
「部署内で業務内容を確認・チェックしている」などが
あり得る主張・反論になります。
従業員不正が税務調査において発覚した場合、
国税側は「法人に重加算税」が当たり前のスタンスで臨んできますが、
役員・経理担当者以外の不正においては、
上記の要素で反論することが可能な事案も多いこと、
また重加算税を課されるかどうかは
あくまで事実認定の論点であって明確な基準が無いことから、
あり得る主張は全てした方が有利になります。
「所得の帰属」「損害賠償請求権の計上」も含め、
総合的に理解していただければと思います。
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