税務調査で誤りを自ら伝えるな
※2015年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
税務調査の事前通知があれば、調査の初日までの間に、
少なくとも決算・申告書の見直しをしてみて、
もし誤りがあれば、事前に修正申告すべきことは、
何度も本ブログで伝えてきました。
(これをするメリットは、加算税があるか無いかです)
さて、「税務調査で交渉をしたい」「交渉材料が欲しい」
という税理士の中には、明らかな誤りがあっても、
あえて事前に修正申告を提出せず、税務調査の中で
提示して交渉材料に使おうという方もいるようです。
税務調査は「生もの」ですから、交渉の方法については
一概に「これが絶対!」というものは無いと思います。
調査の交渉ほど機微が必要なこともないでしょう。
いわゆる「おみやげ」と同じで、ベストなタイミングで
あえて誤りを提示できて、それが調査期間の短縮に、
本当につながるなら、それでもいいかもしれません。
その一方で、誤りを自ら提示することでむしろ、
調査期間が長引き、深掘りされることもよくあります。
なぜ、このような大きな差がでるのでしょうか?
調査官の立場に立って考えてみましょう。
調査官は調査に行けば増差をだしたいという思いとともに、
全体として調査件数をこなさなければならない、
という、両極端の本音を抱えています。
この両方を達成するためには・・・
調査官は税務調査ごとに強弱をつける必要があります。
①増差が見込まれるなら調査を深掘りする
⇒ 結果として長くなる
②増差が見込まれないならさっさと見切る
⇒ 結果として早く終わる
の大きく2つに分けて考え、実行しているのです。
話を戻すと、調査の途中で自ら誤りを提示してくる
納税者(税理士)を、調査官はどう感じるでしょうか?
もちろん、「修正申告になるなら少額でも今すぐ終わる」
という調査官もいるでしょう。しかし、
そう考えない調査官の方が多いと思います。
私が調査官であれば、「自ら誤りを提示してくるなんて
もっと調査をやればもっと増差が出るはず」
と考え、調査をもっとやります。
特に・・・なのですが、調査の開始「冒頭で」、
誤りを提示してきた場合、多くの調査官は
「叩けばホコリが出る」と思うのも当然かと思います。
自ら誤りを提示して、他に見られたら困るポイントが
そんなにあるのか、といぶかしがるのが普通でしょう。
【ユルいと感じるとカサにきてくるのが調査官】
私が「おみやげ」を絶対的に否定するのもこういう理由からです。
否認箇所を自ら明かしていいことがあるのか、
交渉が有利になるのか、甚だ疑問です。
調査対応の王道は、調査官に対して
毅然と対応することです。
自ら誤りを提示すると、この逆の行為ですから、
交渉上有利になることは少ないでしょう。
調査対応にはぜひ気を付けてください。
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