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2024.09.20

税務調査によって分掌変更役員退職金を否認された場合の課税関係

※2023年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

今回から数回に分けて、質問・相談が多い「役員退職給与(役員退職金)」

について解説していきます。今回はまず、税務調査でのリスクが最も高い

分掌変更による役員退職金が否認された場合の課税関係を解説します。

役員が退任・完全離職している場合の役員退職金については、

一般的に「最終月額報酬×勤続年数×功績倍率」で計算し、

・代表者の功績倍率が3倍以内

・最終月額報酬を直前に急増させていない

ような場合であれば、税務調査での否認リスクは低いでしょう。

しかし、分掌変更による役員退職金の場合、

役員退任後に代表権のない会長や顧問等として残ることから、

その後も「経営に従事=みなし役員」に該当するかどうかという

事実認定によっては、税務調査の否認リスクが高いケースがあります。

さて、この2つの役員退職金の相違において、

よく勘違いされていることとして、否認された場合の課税関係

(リスク)がまったく違うということが挙げられます。

分掌変更によらない(完全退任の)退職金の場合、

3億円の役員退職金のうち1億円を過大として否認されると、

1億円は法人の損金不算入となり課税が発生しますが、

受け取った側の(旧)役員は3億円の退職所得で変わりません。

ですから、源泉課税を受けることもありません。

これは退職金を一部、税務上の自己否認する場合で考えると

わかりやすいかもしれません。創業者が若くして死亡した場合に、

多額の死亡保険金を法人が受取る場合のタックスプランニングでは、

法人が受取る保険金:3億円

功績倍率3倍(最大)とした場合の退職金

(損金算入限度額):2億円

法人税と相続税などを総合的に加味した場合に、

退職金を3億円支給した方が税務メリットがある

(税務上の損金算入限度額を超える退職金を支給した方が得)

法人は3億円の退職金を支給し1億円を税務上自己否認

とするケースも多くありますが、このタックスプランニングでは

受取側の退職金はあくまでも3億円と計算することになります

(あくまでも法人税における過大部分を損金不算入しただけ)。

一方で、分掌変更による退職金3億円を否認された場合、

否認根拠は「役員は退任しておらず税務上はみなし役員」であって、

支給した金銭は退職金ではない、と見做されますので、

法人税

役員退職給与以外の役員給与=定期同額給与以外の役員給与

(=役員賞与)となり全額損金不算入

所得税

退職所得ではなく給与所得

源泉所得税

給与所得で再計算した源泉徴収税額で差額納付

(+住民税特別徴収漏れ)

という、いわゆる「トリプル課税」になります。

よくある勘違いは、分掌変更によらない(完全退任の)退職金は

一部否認されても(自己否認でも)受取り側は退職所得であること、

そしてもう1つが、分掌変更による退職金を否認された場合は、

その全額が否認される(一部否認がない)のであって、かつ

トリプル課税のリスクを理解していないことです。

ここを理解していないと、安易な分掌変更による退職金支給を

顧問先に勧めてしまい(認めてしまい)、税務調査によって

あり得ない額の追徴課税を課されてしまうことで、逆に言えば、

このリスクを理解していれば、分掌変更による退職金支給に対しては

相当な理論武装をしておかないとダメだとわかるでしょう。

さて、分掌変更による役員退職金をさらに考えていくと、

・支給要件=経営に従事とは?(みなし役員の要件)

・筆頭株主や大株主には支給できないのか?

・分割など未払計上は認められないのか?

など掘り下げるべき論点は多くありますので、来週水曜の

本メルマガ以降において、各論点を順次解説していきます。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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