税務調査の分岐点が3月である2つの理由
※2018年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
先日受けた税務調査の相談なのですが、
去年秋から継続されている調査事案でした。
法人の規模は売上が約10億円。
否認指摘を受けている項目は
全部で10個あり、繰欠を考慮しても
5年で本税が最大1.6億円となっています。
重加算税の対象となる項目も2つあります。
確定申告が明けてすぐ、調査官から
税理士に何度も連絡があり、
「修正申告してくれるのか、してくれないのか、
経営者と話して早急に決めて連絡して欲しい」
と督促されたようです。
なぜこの時期に、調査官が焦っているのか
というのと、2つの理由があります。
〇できれば3月中に調査を結了したい
税務調査は国税の事務年度である
7月~6月で動くのですが、国税内の「評価」は
4月~3月でされることになります。
3月までに結了した調査事案については、
現在の上司が評価しますので、評価に
直結するのですが、4月~6月に結了した
調査事案は7月以降の上司が評価することになり、
実質的に評価対象から外れることになります。
(7月以降の上司は、4~6月結了の
調査内容は机上でなければ知ることができない)
調査官も、調査事案が大きければ大きいほど
(多額の増差が見込める、または重加算税事案)、
3月中に終わらせようと躍起になります。
これは調査官自身の評価のため、ということです。
〇更正をするなら6月までに準備が必要
納税者が修正申告を提出しない、というのであれば
調査官は更正をする準備をしなければなりません。
ただ、更正というのはかなり面倒なもので、
証拠を固めるために必要であれば
反面調査に行かなければなりません。
さらには、それらの証拠収集が終わった後も、
税務署内では「重要審議会」(じゅうしん)が
開催されて、更正(否認)内容が適正か
どうかの検討・決裁が必要になります。
更正となれば、「重要審議会」も
少なくとも副署長・署長の2回は必須で、
かつ証拠不十分や課税要件によっては
「差し戻し」をされることまで考えられます。
税務調査の中で、どれだけやり取りをしても、
重要審議会のための資料作成などを考えれば、
調査官には2ヶ月程度の時間が必要になります。
だからこそ、
更正になる(とすれば)
⇒
6月中(事務年度内)に終わらせるために
⇒
3月中に修正申告か更正か明確にしないとダメ
という逆算を調査官がしていることになります。
調査官は国税の内部事情を言わないですが、
内部事情を知っていれば、税務調査において
3月が1つの分岐点になることがわかります。
冒頭の調査事案も、3月中に修正申告をする
ことを前提に、一部の否認項目を取り下げる、
もしくは重加算税の対象項目を減らしてもらう
ことで交渉すれば、有利に進む可能性もあります。
3月下旬という分岐点は
しっかり把握しておくべきでしょう。
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