税務調査はなぜ行われるのか?
※2021年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
本メルマガでは、税務調査の手続きなどを含め、
実務上重要なテーマを都度取り上げてきましたが、
今回から毎週金曜は税務調査を【体系的に】理解することを
目的とした連載・シリーズを開始することにします。
質問検査権をベースとした税務調査の手続きの理解はもちろん、
国税の内部規定や、税務調査で実務上知っておくべき点、
疑問を持ちやすい内容を取り上げていきます。
今回は「税務調査はなぜ行われるのか?」という根本論です。
国税通則法で「調査」という言葉が最初に出てくるのは、
下記の条文になります。
国税通則法第24条(更正)
税務署長は、納税申告書の提出があった場合において、
その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が
国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、
その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと
異なるときは、その調査により、当該申告書に係る
課税標準等又は税額等を更正する。
この規定から、(税務)調査とは申告内容の
誤りを是正(更正)するために実施されるものです。
では、なぜ税務調査が必要なのでしょうか?
国税通則法第16条第1項第1号において、
「申告納税方式」が規定されていて、
納税者がする申告により第一次的に納税義務が確定する
ことになるわけですが、この申告内容をそのまま
信じれば課税漏れが発生する可能性があるわけです。
ですから、上記の国税通則法第24条において、
税務署長がこれを是正する更正(又は決定)により
第二次的に納税義務が確定する方法を採用しており、
この更正のために税務調査(実地の調査のみならず
机上の調査を含む)が実施されるわけです。
国民は憲法第30条で納税の義務を負っている一方、
国が課税するということは、国民に対する
財産権の侵害になり得るわけです。
だからこそ憲法第84条で租税法律主義を掲げ、
課税庁が法律に則った課税しかできない制限を加え、
さらには国税通則法において、質問検査権など
税務調査の手続きを規定することで、
課税権の乱用を抑えることをしているわけです。
解説がかなり難しくなりましたが、
全体像としては下記になります。
憲法第30条(納税の義務)
⇒
憲法第84条(租税法律主義)
⇒
国税通則法第16条(申告納税方式)
⇒
国税通則法第24条(更正)
⇒
国税通則法第74条の2(質問検査権)~
実務をしていると当たり前に対応している
税務調査も、それが実施されている背景・事情を
知ると無味乾燥ではないことがわかります。
来週は、税務調査が「任意調査」と
呼ばれる理由について解説します。
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