税務調査を拒否し続けると税務署はどう対応するのか?
※2021年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
毎週金曜の本メルマガでは、税務調査を体系的に理解する
内容を連載で解説していますが、今回は受忍義務に違反し、
「税務調査を拒否し続けるとどうなるのか?」を解説します。
本メルマガを読んでいる税理士・会計事務所の方々であれば、
税務調査を拒否するという対応をとることはないでしょうが、
一方で調査官の対応が悪いなど、税務調査に協力したくない
状況に陥ることもあろうかとは思います。
税務調査が「任意調査」と呼ばれるとはいえ、
受忍義務がある以上は実質的に断ることができないのは、
3月26日配信の「税務調査が任意なら断れないのですか?」
においてすでに解説したとおりです。
国税の質問検査権に対して拒否をした場合、
国税通則法第128条(罰則)における
「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」に該当する
のですが、実際に受忍義務違反(検査拒否罪)に問われた
調査事案は無いと言われています。
そうなのであれば、税務調査を拒否しても
実質的に不利益がないと捉えられそうですが、
受忍義務違反よりも大きな不利益があり得ます。
まず考えられるのが、国税の3つの対応方法です。
●反面調査
調査をできない・帳簿等を確認できないことから、
把握できる取引先への反面調査や、銀行調査を実施して
口座の動きを確認することになります。
一般的に反面調査=補完調査なので、その必要性を
問われることが多いですが、調査を拒否しているのですから
反面調査をされても致し方ないといえるでしょう。
●青色取消し
過去の判例などにより、帳簿等を見せない=保存がない
(のと同じ)と解釈され、青色取消しになる可能性が
高いです。これは下記の推計課税とも連動しています。
●推計課税の適用
帳簿等を確認できないことから、実額による
課税ができないということで、推計課税が
適用される可能性があります。推計課税は青色申告者に
適用できませんから、同時に青色取消しになります。
これらに加えて実はもう1つ、大きな課税論点として
「仕入税額控除の全否認」という措置があります。
直近では、東京高裁の令和2年8月26日判決でも
納税者が(地裁に続いて)負けています。
この裁判では、遊戯場の経営等を行う法人に無予告調査、
併せて顧問税理士も調査を拒否しました。その後もなんと、
1年4ヵ月も調査を拒否し続けたということで、
仕入税額控除を否認、38億円の更正となりました。
上記の「青色取消し」でも触れましたが、
調査を拒否し帳簿等を見せないというのは消費税法の
「帳簿等を保存しない場合」に該当すると判断され、
仕入税額控除を否認されたわけです。
ちなみにこの裁判では、顧問税理士(と他の税務代理人)
が社長に対して「税務調査に応じなくても何ら問題はない」
と言い続けていたようで、推察するに
「税務調査対応に強い」を標榜していた税理士に
間違った対応を教えられたケースかと思います。
調査対応に関する質問・相談の中でも、
「調査に協力したくない」主旨の内容もあるわけですが、
受忍義務違反に問われるより、上記の課税や対応を
受ける方が納税者に不利益になります。
間違った調査対応はしないようにすべきなのです。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。