税務調査先の選定基準と順序
今回のテーマは、『税務調査先の選定基準と順序』です。
(2011年7月27日配信メルマガより)
7月11日(通常は10日)の異動日から2週間強の期間が経ちました。
この間、調査官は今後半年間の調査先の選定作業を行っています。
今週あたりから税務調査の連絡が入り始める時期になり、
年末まで税務調査の最盛期を迎えることになります。
さて、調査先の選定基準については、
私のセミナーでも具体的にお話ししているところですが、
今回は調査官(統括官を含む)が調査先の選定をしている
順序についてポイントと基準を書いてみたいと思います。
(1)KSKによる選定
①前回から長期間調査が実施されていない
②所得率(=所得÷売上)が低調
③同業者の所得率と比較して低調
(2)資料せんとの突合
(1)で選定された調査対象の見込先について、
提出された申告書・決算書等に加えて
資料せんと照合し、不明点等を洗い出します。
資料せんは、法定調書と法定外調書に分かれますが、
どちらも重要視しています。
提出物の中でも、勘定科目内訳明細書に記載のない
取引先が資料せんによって判明するようなケースは、
簿外取引の可能性があるとして選定対象になります。
(3)好況調査先の選定
まず、ここ数年で売上が伸びている会社の選定をします。
売上が急激に伸びている会社は特に、所得を圧縮
しやすい傾向にあり、真っ先に選定対象になります。
(4)数値異常・赤字法人の選定
決算書の数字で、勘定科目に異常値がある場合、
もしくは赤字法人であったとしても、(2)において
帳尻が合わない法人は選定対象となります。
しかし、これはあくまでも経験則ですが、
赤字法人に税務調査に入ったとしても、
増差所得は低い場合がほとんどで、実際には
増差税額が発生するケースの方が少ないです。
よく「赤字法人に調査は入りにくい」と言われますが、
これは事実で、税務調査の効率(同じ調査日数を
かけた場合の増差所得・税額)を考えると、
調査先に選定するインセンティブが働かないといえます。
(良いか悪いかは別次元の話です)
(5)継続管理対象先の選定
一番最後の基準は、(2)(3)(4)で選定から
外されたとしても、継続管理対象先は
重点的に調査対象先として選定されます。
継続管理対象先とは、大規模法人と
前回の税務調査で重加算税が賦課された法人です。
大規模法人は、一度の税務調査ですべてを
把握することが困難であるため、ある一定の周期
(3~4年)で調査に入ることになっています。
また前回の調査で重加算税が賦課されているということは、
「仮装または隠ぺい」をした法人であるということであって、
基本的には大規模法人と同じく、
3~4年の周期で税務調査を行うのです。
このような手順で調査先の選定を行っているのです。
もちろん選定基準がすべて明確というわけではありません。
しかし、キーになるポイントは
「資料せんとの突合」「重加算税の課税事績」
あたりにあるのはご理解いただけるかと思います。
※2011年7月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
また、ブログの内容等に関する質問は、
一切受け付けておりませんのでご留意ください。