税理士の妻が青色事業専従者に該当しないとされた事例
※2017年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「税理士の妻が青色事業専従者に該当しないとされた事例」ですが、
平成28年9月30日東京地裁判決を取り上げます。
本件は
〇税理士の妻(乙)が夫(甲税理士)の青色事業専従者になっている
〇妻は役員として、関連会社3社の業務にも関与
という状況でした。
まずは、関連条文を見ていきましょう。
所得税法施行令165条では「専ら〜事業に従事するかどうかの判定は、
〜専ら従事する期間がその年を通じて6月をこえるかどうか」としています。
そして、同法2項二号で他に職業を有する者であっても、
「その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが
妨げられないと認められる者」についてはOKとしています。
これに関して東京地裁は下記と判断しています。
〇かかる例外に該当するかどうかについては、他の職業に従事する時間が
およそ短く、当該事業に専ら従事することが妨げられないことが一見して
明らかであるかどうか。
〇さらには、上記に当たらない場合を含め、当該事業及び他の職業の性質、
内容、従事する態様その他の諸事情に照らし、実質的にみて当該事業に
専ら従事することが妨げられないと認められるかどうかによって
判断するのが相当である。
〇代表取締役の地位にあったA社に関する乙の業務には相応の事務量が
あること自体は否定し難いものであり、これらの業務については、
同社の事務所に赴いた時のほか、主として自宅又は甲事務所において
従事していたことになる。
〇この点だけをみても、他の職業に従事する時間がおよそ短く、当該事業に
専ら従事することが妨げられないことが一見して明らかであるという
ことは困難である。
〇乙は、いずれも1年の売上高が1000万円を優に超える規模の
関連会社において、代表取締役又は取締役として業務に従事しており、
その役員報酬の合計額は、平成21年分が960万円、平成22年分が
920万円、平成23年分が960万円であり、甲事務所に係る
本件各給与の額をはるかに超えるものというべきである。
〇乙の関連会社の業務は、特に、代表取締役を務めるA社の業務を中心
として種々の事務について相応の業務量があったものというべきである。
〇これに対し、本件事業は、甲事務所における原告の税理士業務であって、
乙は、原告の「所長代理」ないし「所長補佐」として、同事務所の税務、
会計業務に従事していたというところ、乙は、関連会社の業務と甲事務所の
本件事業に係る業務とを、主として自宅又は甲事務所において行っていた
ことになるのであるから、各業務の性質、内容、従事する態様等に照らし、
乙の関連会社の業務について、本件事業に専ら従事することが妨げられない
ものであったとまでは認め難いというべきである。
〇乙は「その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事する
ことが妨げられないと認められる者」に該当するとはいえず、平成21年
ないし平成23年の各期間を通じて「他に職業を有する者」であったことに
なるから、本件事業に係る事業専従期間があった期間が6か月を超える年は
なく、したがって、本件各係争年分のいずれにおいても、本件事業に係る
青色事業専従者には該当しないというべきである。
なお、この裁判は東京高裁(平成29年4月13日)において棄却され、
納税者敗訴となっています。
関連会社が何社あるかはともかくとして、妻が会計法人等の取締役に
なっているケースは多いかと思います。
この場合、青色事業専従者になっていなければ問題ないのですが、
なっている場合は「その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に
専ら従事することが妨げられないと認められる者」に該当していることが
要件です。
最終的には事実認定の問題ですが、他の十分な作業量を要する業務が
ある場合は認められませんので、ご注意頂ければと思います。
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