税理士の顧問料は短期前払費用に該当するのか?
※2015年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「税理士の顧問料は短期前払費用に該当するのか?」ですが、
複数の事例を取り上げます。
税理士自身の1年分の顧問料を顧問先に前払いさせ、「節税になります」
という「あり得ない提案」がされていることがあります。
しかし、これは税務調査で指摘されれば、修正申告の対象になるものであり、
税理士として提案すべきものではありません。
ただ、過去に私は「何度も」税理士自身から「顧問先に前払いさせて
いるのですが、どうしたらいいですか?」と相談されたことがあります。
実際に、これを加算して修正申告を書いた税理士も知っていますが、
これでは立つ瀬がありません・・・。
こうならないためには、なるべく早く前払いを止めることしかありませんが、
なぜ、税理士の顧問料は短期前払い費用に該当しないのでしょうか?
「TKC税務Q&A」に下記事例が掲載されています。
【質問】
法人税基本通達2-2-14に短期の前払費用について規定されていますが、
本通達に定める前払費用と前払金(前渡金)、繰延資産との相違について
具体的な例によって説明してください(以下、略)。
【回答】
1 前払費用の意義については、法基通2-2-14通達において
明らかにされていますが、更に具体的に述べますと、次のようになります。
(1)一定の契約に従って継続的に提供を受けること、要するに等質等量の
サービスがその契約期間中継続的に提供されること。
(2)役務の提供の対価であること。
(3)翌期以降において時の経過に応じて費用化されるものであること。
(4)現実にその対価として支払ったものであること。
以上の要件のすべてを満たす費用が本通達における前払費用に該当する
こととなりますので、一定の時期に特定のサービスを受けるために
あらかじめ支払った対価(例えば、前払い給料、前払い顧問料、翌期に
放映されるテレビCM料等)、あるいは物の購入とか生産に対する対価の
前払いは前払金(又は前渡金、手付金)であって前払費用に該当しません。
また、ノーハウの提供を受けるための頭金等既に提供を受けたサービスの
効果が将来に及ぶためにその対価を繰り延べるいわゆる繰延資産も
前払費用とは性質を異にします。
以上のことから、前払費用に該当する費用としては、土地建物等の賃借料、
保険料、工業所有権等の使用料、信用保証料、手形割引料、借入金利子、
ロイヤリティ(繰延資産に該当するものを除きます。)等になります
(以下、略)。
ここで「前払い顧問料は前払金であり、そもそも前払費用に該当しない」
という旨が記載されていますので、2-2-14の適用はあり得ないことに
なります。
また、上記(1)で「等質等量」ということが述べられていますが、
これは過去の判決などでも示されている考え方です。
〇 東京地裁(平成19年6月29日)
本件通達は、企業としては、前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の
提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ
提供を受けていない役務に対応するもの)はその支出をする時の費用に計上
する経理処理を行っていることが多く、これらについて厳密な期間計算を
行って税務上別個の計算を行う実益を捨ててもさして弊害がないと思われる
ことから、企業におけるこれら期間損益の処理を特例的に是認する取扱い
であると解されるところ、その役務が等量等質のものではない場合には、
時の経過に応じて収益と対応させる必要があることから、本件通達による
特例的取扱いは認められないものと解すべきである。
〇 国税不服審判所裁決(平成16年3月24日)
所得税基本通達37―30の2で述べた前払費用とは、〔1〕一定の契約に
従って継続的に提供を受けること、すなわち、等質等量のサービスがその
契約期間中継続的に提供されること、〔2〕役務の提供の対価であること、
〔3〕翌年以降において時の経過に応じて費用化されるものであること、
〔4〕現実にその対価として支払ったものであることの4つの要件の
すべてを満たす費用と解するのが相当である。
そもそも前払い顧問料は前払金なのですが、顧問料は等質等量にも
なり得ないものです。
当然ですが、毎月、税理士に相談等する内容が等質等量になることは
あり得ません。
「記帳代行料はどうでしょうか?」と聞かれたこともありますが、
これも上記と同様の考え方となります。
自分の顧問料を前払いさせ、これが否認されていては、税理士として、
非常に恥ずかしい思いをすることになります。
税理士や弁護士などの顧問料は短期前払費用の対象にはなりません。
この考え方をしっかり覚えておいてください。
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