税理士不在時に申述書を
この時期にまだ私のところに相談がある税務調査の事案は、
納税者側としてもそうなのですが、調査官側も
確実に(増額)更正することを視野に入れています。
調査官も更正など面倒だからしたくないのですが、
6月で事務年度が終わるので、
かなり微妙な駆け引きが必要とされるのが事実です。
さて、このブログでも書いていますし、
セミナーや研究会でも繰り返しお伝えしていますが、
申述書や確認書と呼ばれる書面に納税者がサインする、
いわゆる「一筆入れる」という行為に関しては、
「絶対に応じない」ようにしてください。
というのも、「一筆入れてください」と調査官が言いだすのは、
そのままでは課税できないからそう言うのです。
5月の下旬に相談があった事案で、こんなことがありました。
税務調査で事実の認識において、調査官と納税者で
かなりの差がありました。この段階で私に相談がありました。
その溝が埋まらない中、6月上旬に税理士事務所が
全員で研修旅行に行き、その平日2日間は調査の対応が
できないことを調査官に伝えたところ・・・
なんと税理士がいない間に、調査官が直接納税者に連絡をし、
調査官に有利な申述書を納税者に書かせたのです。
しかもその申述書を調査官が税理士に開示せず、
何を書かされたのかは納税者の記憶ベース・・・
この事案はまだ終わっていませんが、
こういう状況になると納税者側としては圧倒的に不利です。
①税理士がいない間の行為も有効
納税者が了承しているわけですから、
たとえ税理士がいないと間に行われた行為であっても、
それは法律上有効となります。
②申述書は有効
納税者が調査官に脅迫されて書かされたのであればまだしも、
そうでないのであれば申述書は有効にならざるを得ません。
訴えるとしても民法上の「錯誤」で無効と主張するのが精一杯。
まず、ここで行っていただきたいのは、
納税者(関与先)には、「税理士がいないときに
調査官から連絡があっても、絶対に会わないこと」
を事前に伝えておかなければなりません。
昨日大阪で重加算税のセミナーをしたのですが、
そのときにこのような質問がありました。
「重加算税となった場合に、調査官から経営者に、
確認書にサインするよう言われる場合がありますが、
どのように対応すればいいですか?」
これも申述書と同じことで、経営者に
今後しないという反省文を書かせるという「名目」で
書面へのサインを求めてくるわけですが、
調査官側としては重加算税を課したい行為に対して、
「故意にした」という立証を確実にしたいだけです。
つまり、この確認書を取らなければ
重加算税を課せないと言っているのと同じです。
書面へのサインを要請してくるということは、
「一筆入れてくれ」=「今のままでは課税(更正)ができない」
なのですから、どんな書面でもサインすべきではありません。
また税理士がいない間の行為は、常識で
想定できる範囲を逸脱していますが、
これをもって法律的に課税庁に抗弁するのは
非常に難しいので、事前に対策しておくことが大事です。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
2012年6月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。