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2017.06.02

税理士自身が不動産オーナーの場合の事業的規模

※2017年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「税理士自身が不動産オーナーの場合の事業的規模」ですが、

平成19年12月4日の裁決を取り上げます。

本件はタイトルの通り、税理士自身が不動産オーナーであり、

借主は税理士法人、会計法人、請求人の長男、という状況です。

そして、

○税理士法人から:年間720万円

○会計法人から:年間180万円

○長男から:年間12万円(駐車場代)

○年合計:912万円

という状況です。

ちなみに、不動産所得の事業的規模につき書かれた

所得税基本通達26−9には下記とあります。

(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)

建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、

社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているか

どうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に

該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみて

これらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、

特に反証がない限り、事業として行われているものとする。

(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる

独立した室数がおおむね10以上であること。

(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

ここからも分かる通り、事業的規模は実質判断であり、

5棟10室基準にも「おおむね」という表現が付されています。

細かい事実関係は全文をお読み頂くとして、

国税不服審判所の判断をご紹介します。

○事業性の判断は、以上の諸点を総合的に勘案して行われるべきである

ところ、本件貸付けについては、営利性、継続性、人的・物的設備など

部分部分としてみた場合は直ちに事業ではないということはできない

要素も認められる。

○しかしながら、本件貸付けは、請求人の税理士事務所から業務を

分担する形で派生的に設立された請求人が主宰する本件同族会社2社及び

親族に対する限定的かつ専属的なものであり、平成5年借入金は、請求人の

税理士事務所等として使用することを目的とした本件建物の建設資金等

であったこと及び本件借入金の本件各年分の年間返済額は、本件貸付けの

年間賃貸料収入を上回っており、本件貸付けに係る賃貸料収入以外の

収入も原資となっていること、また、本件同族会社2社の賃貸料は

それぞれの法人の収入及び人員割合が計算の根拠となっていることからすると、

請求人における事業遂行上その企画性は乏しく、危険負担も少ないと

認められる。

○本件建物は、その構造からみて他に賃貸が可能である等の汎用性が

少ないなど、これらの点における請求人の自己の危険と計算による

事業遂行性は希薄であると認められる。

○本件建物の設備等の管理・修理点検等は、請求人が行っているものの、

清掃及び冷暖房設備点検、ビルの防犯・火災のセキュリティ契約等は、

本件同族会社2社が行っていること、賃貸料の集金等は、インターネット

バンキングにより、振替処理されていること、また、本件貸付物件は、

請求人の主宰する本件同族会社2社及び親族に継続して貸し付けられて

いることから、請求人にとって賃借人の募集等をする必要はなく、

賃貸料の改定交渉等の業務の煩雑さもなく、ビル管理業務等の負担も

軽微であることから本件貸付けに費やす精神的・肉体的労力の程度は、

実質的には相当低いと認められる。

○これらの諸点を総合勘案すると、本件貸付けは、社会通念上事業と

称するに至る程度のものとは認められないと判断するのが相当である。

○なお、請求人は、

(1)資産の取得に係る投資額(借入金)の多寡を重要視すべきであること

(2)事業とは、社会通念に照らして事業と認められるものすべてを含み、

事業所及び人的・物的要素を結合した経済的組織を必ずしも必要とせず、

本件貸付けは十分に自己の危険を持ち得る事業といえること

(3)総合ビジネスを視野においた事業を行うという計画を基に建築、

事業経営を行っているという現状にかんがみると本件貸付けは

不動産所得を生ずべき事業に該当すること

(4)平成13年東京高裁判決の中で挙げられている事業規模の判断基準

(賃料収入1,500万円ないし床面積500平方メートル)に照らし

合わせた場合、本件貸付けは事業に該当する

とも主張するが、不動産貸付けが不動産所得を生ずべき事業に該当するか

否かは、社会通念上事業といい得るか否かによって判断するのが相当と

解されており、これらの点に関する請求人の主張は採用できない。

いかがでしょうか?

別の事例にはなりますが、平成16年9月27日裁決でも同様の判断が

下されています。

都市の中心部では地価が高いため、税理士事務所が賃貸ビルを第三者から

賃借していることが多いですが、中心部から外れると、税理士自身の

自社ビルということも少なくありません。

このような場合の事業的規模の判断はケースバイケースにはなりますが、

専属的に同族法人等が賃借している場合には注意しなければなりません。

 

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