2015.05.25

税額を減らす意図

以前、「不正=重加算税ではない」と題して、

重加算税と7年遡及の違いをお伝えましたが、
さらに深堀りして解説したいと思います。

まずは重加算税の解説です。

国税通則法第68条
第65条第1項の規定に該当する場合において、納税者が
その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき
事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、
又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、
当該納税者に対し、政令で定めるところにより、
過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る
過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に
100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

この条文を分解すると、

【条件】
過少申告加算税がかかる要件を満たしていること

【主語】
納税者

【要件】
隠ぺいまたは仮装していること

となります。

対比した方が理解しやすいので、
7年遡及になる場合を先に解説します。

国税通則法第70条第4項
偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、
若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税についての
更正決定等又は偽りその他不正の行為により当該課税期間において
生じた純損失等の金額が過大にあるものとする納税申告書を
提出していた場合における当該申告書に記載された当該純損失等の金額
についての更正は、第1項又は前項の規定にかかわらず、
第1項各号に掲げる更正決定等の区分に応じ、当該各号に定める
期限又は日から7年を経過する日まですることができる。

この条文を分解すると、

【条件】
偽りその他不正の行為をしていること

【主語】
なし

【要件】
税額を免れる(わざと過少申告)

まったく条件・要件などが違うことはおわかりいただける
かと思いますが、さらに解説を加えます。

まず、従業員が行った売上除外などの多くが
重加算税になりやすいのは、「納税者=従業員」と同一視できる
客観的状況の中で、「隠ぺいまたは仮装」をしているからです。

従業員は「会社の法人税等を減らしてあげよう」と思って
売上を除外するわけではなく、あくまでも私利私欲のためです。
しかし、重加算税の規定は、「隠ぺいまたは仮装」をしていればよく、
「税額を免れる」ことを要件としていません。
だからこそ、重加算税になりやすいのです。
(もちろんすべての従業員の不正=重加算税はありませんが)

逆に7年遡及の場合、主語はありませんので
誰が行った行為であっても、不正をして
税額を減らしていたら要件に合致するわけですから、
会社と従業員を同一視するなどの問題はまったく生じません。

混同されやすいこの2つの条文ですが、
条件・主語・要件に分けて考えると、
税務調査の現場で主張・反論を正確にすることができるのです。

 

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