立証責任が税務署側にある法的根拠
※2014年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
本メルマガやセミナー・研究会等において、私は常々
「税務調査における否認指摘の立証責任は税務署側にある」
「納税者側が立証できないという理由で
否認される根拠にはならない」
「税務署は立証責任があるから、質問検査権という
権限を法的に与えられている」
と伝え続けています。そこで・・・
私なりにさらに深く考えてみました。
税務調査の場で「立証責任はあなた(調査官)にある!」
と主張したときに、調査官から反論されたらその根拠は
何を提示すべきなのでしょうか。
確かに、複数の書籍のみならず、国税庁のホームページ
においても、「税務訴訟における」立証責任は
課税庁側にある、と記載されてはいます。
税大論叢「税務訴訟における立証責任―裁判例の検討を通して―」
https://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/50/05/hajimeni.htm
確かに、訴訟法の論理において、税務訴訟も同じように
裁判になれば立証責任が課税庁側にあることは理解できます。
一方で、「税務調査においても」立証責任が原則として
税務署側にある、と言える根拠はどこにあるのでしょうか。
難しい租税法等の法律論はさておき・・・
税務調査の大元となる国税通則法の規定をみてみましょう。
国税通則法第24条(更正)
税務署長は、納税申告書の提出があつた場合において、
その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の
計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、
その他当該課税標準等又は税額等がその調査した
ところと異なるときは、その調査により、当該申告書に
係る課税標準等又は税額等を更正する。
税務調査における否認指摘(所得が増える指摘)を
あえて分類してみると、
・帳簿等には載っていない売上や収入が他に存在すること
・帳簿等に載っている経費や原価が実際には存在しないこと
の2つに分けることができます。これらを
難しい言葉で表現すると「課税要件事実」といいます。
上記の通則法の規定を言い換えると、
「更正(所得金額の増額)を行うためには、その更正に
必要な課税要件事実が充足されていることについて
税務署が税務調査により認定することが必要」
と読むことができます。つまりは、
「税務調査において否認指摘の立証責任は
税務署側にある」となるわけです。
「この交際費を、誰と行ったのか(納税者が)
証明できないのであれば、否認しますよ」
「役員である奥さんが、役員報酬以上の業務内容
をしていることを立証できないと過大とみなします」
これらは、本来であれば立証責任が調査官にあるものを、
納税者にムリヤリ押し付けている発言であり、
調査官が否認するための論理に過ぎません。
事業関係者以外の者と交際費を支出したのか、
役員が業務をせずに報酬を受け取っているのか、
これらの証拠を収集するのは調査官の仕事です。
また、調査官は特に重加算税を課す場面において
「一筆」を取りたがりますが、これは立証責任が
税務署にあることを理解しているからであって、
上記のような立証責任の押し付けと、
行動が矛盾していることも指摘しておくべきでしょう。
税務調査の最盛期です。
立証責任を押し付けられた場合は、その場で
法律根拠をもって反論すべきなのです。
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