立証責任が納税者にあるケース
※2014年10月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税務調査における立証責任について解説していきます。
ブログにおいて、
「税務調査における立証責任は原則として税務署側にある」
として、その根拠を明示しました。
では、どのような場合でも立証責任が税務署側にあるかというと
そういうわけではなく、立証責任が納税者側に
あるというケースもあるわけです。
1つの例としてわかりやすいのが、当初申告において
計上していなかった経費が存在し、それを税務調査等で
新たに認容してもらう場合があります。
当初申告で計上していないのですから、
新たに認めてもらうには、その証拠等を納税者側が
提示するのは、当然の行為と考えることができます。
これは、更正の請求で考えるともっともわかりやすく、
平成23年の改正(期限が5年に延長)において、
罰則規定が新たに設けられることになりました。
国税通則法第127条
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役
又は5万円以下の罰金に処する。
一 第23条第3項(更正の請求)に規定する更正請求書に
偽りの記載をして税務署長に提出した者
この規定を言い換えると、「納税者が誤って過大申告したのだから
還付を受けたいのであれば、税務署側が納得するよう
納税者側が立証しなければならない」ことを意味しています。
以上のことからわかる通り、「納税者側に有利な項目」は
納税者側に立証責任があると考えられています。
納税者に有利になる項目としては、例えば
下記のような項目が考えられます。
・当初申告で算入していなかった経費
・措置法適用による特別控除
・圧縮記帳による損金計上
・資産の評価損失・短期前払費用など、
あくまでも課税庁が(通達などで)認める例外規定
税務調査で否認指摘を受ける項目というのは、そのほとんどが
納税者に不利なわけですから、「原則として」
その否認指摘に対する立証責任は税務署側にありますが、
一方で、「納税者側が認めてほしいと考える項目」は、
立証責任が納税者にあると考えなければなりません。
例えば、貸倒損失を計上していたとしましょう。
調査官から「貸倒の要件を満たしていますか?」と
質問されれば、納税者側としては「督促の履歴・証拠」
などを提示するのが一般実務ですが、これは納税者側に
有利なものを認めてもらう、という観点から考えると、
やはり納税者が証拠を残しておき、損金要件を
満たしているという主張をしなければならない、
という立証責任では理にかなったやり取りと解釈できます。
この立証責任の切り分けについては、
すべての項目において明確にできるわけではないのですが、
上記のような切り分けの基準は知っておくべきです。
また、こう考えると、否認指摘のほとんどにおいて
税務署に立証責任がある、という事実が
おわかりいただけることでしょう。
間違っても、税務調査で不当に
立証責任を押し付けられないようにしたいものです。
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