競争ばかりの出世すごろく
今回は、『税務職員の昇進』がテーマです。
税務職員にとって、毎年、ちょうど3月の時期になると
昇進の判断材料となる勤務評価がつけられます。
各税務署では、直属の統括官が評価をつけ、
担当の副署長そして署長が見直しをすることになります。
昇進については、採用期別に何人と枠が決められています。
この枠の中に入ることも、かなりの倍率の競争を勝ち抜かなければなりません。
昇進するためには、研修での成績や日頃の勤務評価の他、
やはり上司の推薦なども大きく影響してきます。
前回のメルマガでは、税務職員になるには国家公務員Ⅲ種試験(普通科)と国税専門官試験によって採用される2つのルートがあるとお話しました。
彼らの昇進の最終的なポストは税務署長となります。
同期の中でも2~3人は、地方の国税局長クラスになる者もいます。
東京国税局を例にお話をしますと、
部長ポストは総務部、課税第一部、課税第二部、徴収部、調査第一部、調査第二部、調査第三部、調査第四部、査察部と9つのポストがあります。
この中で、普通科と国税専門官に与えられているのは
調査第三部と調査第四部の部長のわずか2つのポストだけです。
同期の中でも出世頭の者だけがこれらのポストや
五大署(麹町、神田、日本橋、京橋、芝)と呼ばれる署長になることができます。
逆に全く出世できず、税務署の上席調査官のまま
60歳の定年を迎える者も少なくありません。
署長まで出世するためのコースは殆ど決まっています。
税務署ばかりを異動していてはかなり難しいでしょう。
国税専門官採用者は、採用から3年後の専科研修終了時に
全員一律に国税調査官に昇進します。
普通科採用者は、採用8年後から国税調査官に昇進していきますが、
これは全員一律ではありません。
その後は、国税局の実査官、調査官や税務署の会計係長、
総務係長になる者もいれば、上席国税調査官に昇進する者と様々に別れていきます。
上司推薦を受け財務省や国税庁に出向し、連日の激務に耐え抜き、課長補佐になるか国税局の総務課、主務課(所得税課、法人税課、資産税課、消費税課)等に入り、課長補佐にまでなり、副署長なった者だけが、署長のポストに就くことができます。
この厳しい競争に勝ち抜いた頃には56~57歳。
最後の1~2年を税務署長として過ごし、定年まで2年を残して勇退します。
キャリア組と呼ばれる大蔵省組が30代後半、国税庁組が40代前半には署長になるのに対して、ノンキャリアがそのポストに就けるのはわずかな期間です。
以前、税務職員が痴漢行為をして逮捕される事件がありましたが
職員の汚点は、当然、監督責任者である税務署長にもおよびます。
署長の退職金がすべてなくなるケースも少なくありません。
署長として「集大成であるわずかな期間に問題を起こしてくれるな!」
と漏らす事なかれ主義の方も多いようです。
厳しい競争ばかりの出世すごろく。そのゴールに用意された署長の椅子。ゆっくりと座る時間も与えられないほど、現実は厳しい世界なのです。
※2010年3月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
また、ブログの内容等に関する質問は、
一切受け付けておりませんのでご留意ください。