第三者間でのみなし贈与
今回は「第三者間でのみなし贈与」で、
具体的には、さいたま地裁(平成17年1月12日、確定)です。
まずは、事案の概要ですが、下記となっています。
○ A(売主)とB(買主)との間で土地の売買があった
○ AとBは親族ではないが、知人ではある
○ Aは親族の治療費、入院費等のために土地を売却
○ AはB(不動産業者ではない)に買主を探してもらったが、
見つからず、結果として、Bが購入するに至った
○ 売買価格1,500万円には専門家等が介在しておらず、
Bが提示した価格にAが同意した
→ 裁判で2,050万円の鑑定評価書を提出
○ 原処分庁の鑑定評価額は7,090万円
では、結論に行く前に関連条文を確認しましょう。
○相続税法第7条(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の
譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と
当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について
第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との
差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が
遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
ただし、当該財産の譲渡が、その譲渡を受ける者が資力を喪失して債務を
弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から
当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は
遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが
困難である部分の金額については、この限りでない。
○相続税基本通達7-2(公開の市場等で著しく低い価額で財産を取得した場合)
不特定多数の者の競争により財産を取得する等公開された市場において
財産を取得したような場合においては、たとえ、当該取得価額が当該財産と
同種の財産に通常付けられるべき価額に比べて著しく低いと認められる価額
であっても、課税上弊害があると認められる場合を除き、法第7条の規定を
適用しないことに取り扱うものとする。
そして、裁判所は
○ 公開された市場と同視できる状況で買主を誘致していない
○ AとBの売買契約は基本通達7-2に該当しない
○ 裁判所が鑑定した結果は4,513万円
○ これを超える部分の決定を取り消す
→ Bが納付すべき贈与税額は1,381万円
いかがでしょうか?
○ 知人ではあっても、第三者間の取引きであること
○ 過程はともかく、買主を探した事実はあること
○ 結果として見つからないので、Bが購入したこと
という事実があるにも関わらず、みなし贈与となったのです。
実際、私自身の事案、他の税理士から相談された事案を思い出しても、
似たような相談をされたことは何度もあります。
もちろん、時価の定義、乖離状況とリスクはお伝えしています。
ただし、その一方で
○ 隣地は高い
○ 利害相反した第三者間での価格は絶対価格
などの考え方があることも事実です。
もし、皆さんがお客様から同様の相談を受けた場合は、
第三者間でもみなし贈与は適用されることを思い出して頂ければと思います。
判決の中でも
○ 第三者であること
○ 贈与の意思がないこと
○ 租税回避の意思がないこと
とは関係なく、相続税法7条は適用されるとしています。
ご注意くださいね。
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2013年5月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。