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2024.12.20

管理不全空き家指定による固定資産税等への影響

※2023年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のテーマは、
「管理不全空き家指定による固定資産税等への影響」です。

『特定空き家』
これを聞いて思い浮かぶのは・・・
固定資産税等の特例が使用できなくなる
というイメージかと思います。

今回は、この『特定空き家』に関する
方向性情報をお伝えします。

まずは・・・
『特定空き家』という概念に関する
概要を確認します。

法律:
空家等対策の推進に関する特別措置法
(以下、空家対策特措法という)

公布日:
2014年(平成26年)11月27日

施行日:
2015年(平成27年)5月26日

法律の概要:
(1)空家等(同法2条1項):
建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが
常態であるもの及びその敷地をいう。
→ 建物だけでなく、門や塀、
立木、看板なども含めているため、
空家等と定義している。

(2)特定空家等(同法2条2項):
そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は
著しく衛生上有害となるおそれのある状態、
適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが
不適切である状態にあると認められる空家等をいう。
→ 認定基準4つ
そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
著しく衛生上有害となるおそれのある状態
適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

以下、建物前提として、
特定空き家と表記します。

(3)特定空き家の認定手順
空き家特措法に基づき、各市町村は
「空家等対策計画」を作成し、
各市町村が認定します。

(4)特定空き家の認定後フロー
1.空き家の調査
2.特定空き家に認定
3.助言や指導
4.勧告 
→ 翌年から税務上の特典(後述)
  が受けられない
5.命令
→ 命令に従わないと、
  50万円以下の過料
6.行政代執行 
→ 市町村が特定空き家の所有者に
代わって解体などの是正措置を行い、
その費用を所有者から徴収する(略式代執行も可)

(5)特定空き家の認定後における税制上の扱い
1.通常の特例(課税標準の軽減)
固定資産税:
・小規模住宅用地(200平米以下)
→ 固定資産税評価額の6分の1
・一般住宅用地(200平米超)
→ 固定資産税評価額の3分の1

都市計画税:
・小規模住宅用地(200平米以下)
→ 固定資産税評価額の3分の1
・一般住宅用地(200平米超)
→ 固定資産税評価額の3分の2

2.特例空き家の認定後における税務上の取扱い
特定空き家の敷地は非住宅用地
(≠小規模住宅用地、一般住宅用地)
として扱われるため、上記の軽減措置が
適用できなくなります。

ただし・・・
非住宅用地については
負担調整措置が適用されることにより、
課税標準は固定資産税評価額の70%
に軽減されるため、
固定資産税は6倍、
都市計画税は3倍
にはなりません。

固定資産税:
1/6→1(つまり6倍)ではなく、
1/6→7/10(約4倍)

都市計画税:
1/3→1(つまり3倍)ではなく、
1/3→7/10(約2倍)

しかしながら・・・

背景:
(1) 使用目的のない空き家は、
この20年で約1.9倍に増加し、
今後、さらに増加する見込み

(2) 現行法(平成26年制定)は、
緊急性に鑑み、周囲に著しい
悪影響を及ぼす空き家(特定空き家)
への対応を中心に制度的措置を定めている。

つまり・・・
特定空き家になってからの対応では
限界を迎えることから、
法改正が行われることになりました。

法律改正:
空家対策特措法

公布日:
2023年(令和5年)6月14日

施行日:
2023年(令和5年)12月13日

改正の背景と方向性:
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621961.pdf
国土交通省資料

方向性:
空き家につき、
・活用拡大
・管理の確保
・特定空き家の除却等
の3本柱で対応を強化する。

管理不全空き家:
放置すれば特定空き家となる
おそれのある空き家
(管理不全空き家※)に対し、
市区町村が指導・勧告を行います。

※管理不全空き家
窓や屋根、壁の一部が壊れていたり、
雑草が生い茂ったりしている状態の空き家

管理不全空き家の勧告後における税務上の取扱い:
市区町村長から勧告を受けた
管理不全空き家の敷地については、
特定空き家の敷地と同様、
非住宅用地
(≠小規模住宅用地、一般住宅用地)
として扱われるため、
住宅用地の軽減措置が適用
できなくなります。

管理不全空き家の勧告を受ければ
固定資産税・都市計画税が増額
されるため、
・管理をして、通常の空き家の状態を保つ
・取壊し等の対応を行う
といった対応を図りやすくなると
予想されます。

イメージとしては・・・
管理不全空き家に対して
指導したにもかかわらず
改善が見られない場合には、
「特定空き家」に認定される
ことになります。

つまり・・・
「管理不全空き家」概念を創設する
ということは、管理の確保を図り
悪化の防止(特定空き家化の未然防止)
の対応ということもできます。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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