節税目的は否認される
6月中旬から下旬を迎えるこの時期、弊社への相談でも
いまだ調査が終わっていない事案がいくつか残っています。
6月末で税務署の事務年度が終わることを考えると、
事務年度を越すのか越さないのかがポイントになります。
事務年度を越せば、特官部門でない限り
調査担当者が変わることがほとんどで、
そのあたりも含めて判断が必要というわけです。
さて、このように長引く税務調査にはある共通点があります。
それは、双方に「決め手がない」ということです。
この1つの類型として、「節税目的だという理由」で
否認指摘を受けるというものがあります。
例えば、社長が同一である2つの法人があるとします。
この法人同士で売買や役務提供を行っていた場合、
この行為は節税目的だと指摘される場合があります。
なぜなら、片方の法人に所得が偏っており、
もう片方の法人に所得を流している結果になっていれば、
課税所得800万円以下に適用される軽課税率
(18%or15%)のおかげで、双方の法人税額を合算すると
全体として税額が下がっているのは事実だからです。
これは新設子会社を設立し、事業を分散した場合も同じで、
所得が分散されることで税額は確実に減ります。
これらのようなケースで、「はい、そうですか」と
認める調査官が少ないのも事実です。
調査官がもっとも許せないケースともいえるでしょう。
では、調査官としてこれらを否認する根拠は何でしょうか?
1つあり得るのが、「寄付金課税」です。
つまり、役務提供の実態がないであるとか、
売買金額が不当に低額であるという根拠をもとに、
寄付金・受贈益として課税しようとするわけです。
では、役務提供に実態があり、売買金額が適正である場合は?
ここまでくると、否認の法律的根拠は「行為計算否認」
しかないのですが、実はもう1つ、
法律的根拠なく課税する方法があります。
「節税目的だという事実認定」です。
実際の公開裁決事例を見てください。
「役員の分掌変更の翌事業年度に支払われた金員を当該役員に
対する退職給与として取り扱うことはできないとした事例」
(平成24年3月27日裁決)
http://www.kfs.go.jp/service/JP/86/18/index.html
この裁決では、このように述べられています。
「一部支払われた後の退職慰労金の残額については支払時期や
その支払額を具体的に定めず漠然と3年以内とされており、
請求人の決算の状況を踏まえて支払がされていることがうかがえる
ことからすると、本件金員をその支払日の属する事業年度において
損金算入を認めた場合には、請求人による恣意的な損金算入を
認める結果となり、課税上の弊害があるといわざるを得ない。」
つまり、利益が多額に計上されるから、無理やり
退職金を支給したことにしたのではないか?
その損金算入を認めるとおかしい、と判断しているわけです。
ここでおわかりの通り、法律的根拠はなくとも
「その行為に経済合理性がなければ否認されることがある」
という事実なのです。
不服申立てや裁判までいけばともかく、
税務調査の現場では簡単に事実認定などできるはずもなく、
調査官にも「決め手がない」というのが現実です。
しかし、納税者にも反論の「決め手がない」ことも多く、
このような調査は平行線をたどることがほとんどです。
税務調査では、いかに「節税目的ではない」
「行った行為に経済合理性がある」と主張できるかが
ポイントになるということは絶対に覚えておいてください。
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2013年6月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。