納税者が精神的苦痛を被った?
今回のテーマは、前回から引き続きで『税務調査の国賠 -②- 』です。
納税者が国税を相手に国家賠償法に基づき
賠償請求するためには、調査官の故意または過失
が要件になるのは前回書いたとおりです。
では国賠にかけられるのは、不当な「手続き」で行われた
税務調査だけかといえばそうではなく、調査官の故意または
過失により、納税者が精神的苦痛を被ったケースも考えられます。
精神的苦痛を理由とする損害賠償請求が認められるには、
調査官の故意または過失の要件に加え、
「税務調査における質問検査権の行使の範囲、方法、程度について、
社会通念上相当な限度を越えた違法性」の要件が必要になります。
(最高裁平成6年6月24日判決
広島高裁岡山支部平成5年5月11日判決
岡山地裁平成4年4月15日判決など)
例えば、店舗に無予告調査が入り、経営者の承諾があったため、
調査官が机の引き出しの中を開けて見たところ、
プライベートなものが入っていたようなケース。
これは経営者が承諾している以上、調査官が引き出しを
開ける行為は違法ではありませんし、結果として納税者が
見られたくないプライベートなものが入っていたとしても、
「質問検査権の行使の範囲、方法、程度について、
社会通念上相当な限度を越えた違法性がある」
とは認めらないでしょう。
税務調査において「納税者の承諾」が必要なケースについては
『税務調査の国賠 -④- 』で書かせていただくとして・・・
今回は納税者が多大な精神的苦痛を被ったことを理由に
損害賠償請求するには、質問検査権の権限・範囲を正しく理解し、
その限度を越える場合にしか認められないことを覚えておいてください。
※2011年2月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
また、ブログの内容等に関する質問は、
一切受け付けておりませんのでご留意ください。