紹介料:紹介者を明かさないことを優先した場合の落しどころ
※2023年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガから引続き、税務調査において
「紹介料(仕事を紹介してくれた者に対して支払う金銭)」
が論点になり、紹介者を明かさない(明かせない)場合の
具体的な対応方法について解説します。
前回は、調査官に対して紹介者の情報を明かさない場合、
すべき主張として「費途不明の交際費」(法基通9-7-20)
と解説しましたが、この主張の最大の問題点は、
費途不明の交際費=損金不算入だからといって、
相手方を追求しないという代替課税ではない点です。
詳細は下記の記事をご覧ください。
ですから、調査対応としては費途不明の交際費と主張し、
「損金不算入+仕入税額控除否認」+「相手方の追求なし」
で調査官が納得すればそれがベスト(に近いベター)です。
しかし、この主張が通らない=調査官が相手方の追求に
こだわることも容易に想定されます。その場合、
次に考えられる主張内容は、紹介料を「役員賞与」として
処理・受け入れるというものです。
前回のメルマガでは、相手方が明かせない紹介料という
税務調査での問題を避けるためには、「紹介料を
役員報酬の増額分(手残り)から支払い、法人での
処理・支払いにしないことが方策として有効」と書きました。
これを事後的に主張する=紹介料を役員賞与で受け入れる
という主張は、論理的に説明すると、
【役員に対する経済的利益(金銭の一時支給)の
税引後で支払った(家事費・個人的な支出)】
という理解になりますので、役員賞与であれば調査官も
相手方の追求をする論理がなくなります。
この主張が通れば、「損金不算入+仕入税額控除否認
+役員賞与(源泉課税)」+「相手方の追求なし」と
なるわけですが、どちらの主張内容にも共通して
論点になり得るのが重加算税が課されるかどうかです。
「費途不明の交際費」の通達規定では、「支出した金銭で
その費途が明らかでない」が要件になるわけで、実際には
相手方(費途)はわかっているが意図的に【明かさない】
ことから、隠ぺい行為と指摘される可能性が高いでしょう
(この指摘に反論は可能ですが下記との対比で理解ください)。
一方で、役員賞与と主張した場合、上記の論理のとおり、
あくまでも「役員が個人的に税引後の金銭で支払った」
という理解になりますので、そもそも相手方の追求をされる
理由がなく、費途不明の交際費という主張とは相違し、
重加算税の指摘があっても反論は容易でしょう。
全体をまとめると、このようになります。
費途不明の交際費と主張すること:
「損金不算入+仕入税額控除否認」+「相手方の追求なし」
⇒
それでも相手方の追求がある、もしくは重加算税に対して
反論が難しい(重加算税を受け入れたくない)場合
⇒
役員賞与と主張すること:
「損金不算入+仕入税額控除否認+役員賞与(源泉課税)」
+「相手方の追求なし」(重加算税は無し)
※このように無用な課税を受け入れないためには、当初から
役員報酬の税引後(法人の簿外)で支払いすることは重要
支払った紹介料の相手方を明かせない場合、
税務調査での対応としては何を最優先にするのか、
顧問先の意向をきちんと確認することです。
●相手方を絶対に明かさないのか?
●増差税額がどこまで増えても許容できるのか?
●重加算税だけは回避したいのか?
ここまで3回にわたって、相手方を明かせない紹介料について、
税務調査でどう対応すべきかについて解説してきました。
調査において主張・反論する条件分岐が多い
論点ですので、ぜひ整理して理解いただければと思います。
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