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2016.09.16

自称常務取締役に対する賞与の損金算入の是非

※2015年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

さて、今回は「自称常務取締役に対する賞与の損金算入の是非」ですが、

平成14年1月31日の裁決を取り上げます。

では、この事案の前提です。

○請求人は仏壇、仏具の販売業を営む同族会社

○常務取締役営業本部長と冠記した名刺を使用している取締役■■■■に

支給した賞与の額を損金の額に算入すべきか否かが争点

○■■■■は、平成5年3月31日に取締役に就任し、平成11年12月

30日に取締役を辞任するまでの間、法人税法第2条第15号に規定する

役員に該当していた。

○請求人に係る■■■■の持株割合は0.5%であり、本件各事業年度中

その割合に異動はない。

○■■■■は、本件各事業年度中において、常務取締役営業本部長と冠記した

名刺を使用し、請求人の販売会議の席上においても■■常務と呼称されていた

が、請求人の定款等の規定又は株主総会若しくは取締役会の決議等により

常務取締役として職制上の地位が付与された事実はなく、請求人の確定決算書

並びに総会及び取締役会等の議事録にも、常務取締役の名称は付されていない。

○■■■■は、昭和39年12月以降請求人に勤務し、継続して営業に関する

業務に従事しているところ、請求人の総務企画部が作成した「担当者別契約額」

の表によれば、■■■■についても他の使用人同様年間販売目標額が設定され、

かつ、販売実績額に応じた順位付けがされている。

○請求人が本件各事業年度において■■■■に対し支給した賞与(以下「本件

賞与」という。)は、他の使用人に対する賞与の支給時期に支給され、その

事業年度において、その額につき損金経理がなされている。

そして、国税不服審判所は下記と判断しました。

なお、現行法においては削除された条文もありますが、考え方としては、

同じです。

○法人税法第35条には、役員に支給する賞与のうち使用人

兼務役員に支給する一定の要件を具備する賞与の額に限り損金の額に算入

すると規定されているところ、ここでいう使用人兼務役員とは、法人税法

施行令第71条第1項に規定される役員以外の役員で、使用人としての

職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものを

いうとされており、同項に規定する役員とは、代表取締役、専務取締役、

常務取締役等をいうものとされている。

○これらの役員が使用人兼務役員とされない理由については、一般にこの

ような役員は法人内部で主要な地位を占め、対外的にはいわゆる「表見

代表者」として代表権を有する役員とみなされることが多いことによるもの

と解されるが、その一方で、営業上の理由等により単なる通称として

常務取締役等の名称が冠され、その地位が内部組織上明確でない役員も

少なくないから、このような役員であっても「使用人兼務役員とされない

役員」に該当するか否かが問題となる。

○これについては、役員に対する賞与を損金の額に算入しないという

取扱いを適用する場合に、単なる通称又は自称の常務取締役を内部組織上

明確にその地位が付与されている常務取締役等と同列に扱わなければ

ならないとするほどの理由は認められないから、法人税法施行令第71条

第1項第1号に規定する常務取締役とは、定款等の規定又は総会若しくは

取締役会の決議等により職制上の地位が付与された役員をいうと解するのが

相当である。

○これを本件についてみると、請求人が、定款の規定又は株主総会若しくは

取締役会の決議等により、■■■■に対し、職制上の常務取締役の地位を

付与した事実はなく、単なる通称等としてその名称を使用していたにすぎない

と認められる。

○■■■■が「営業本部長」という使用人としての職制上の地位を有し、

かつ、常時使用人としての職務に従事していたことが認められるところ、

■■■■は、請求人に係る持株割合によっても「使用人兼務役員とされない

役員」には該当しない。

○したがって、■■■■は、使用人兼務役員に該当すると解するのが相当。

○そうすると、本件賞与の額が、本件各事業年度の損金の額に算入されるか

否かは、その支給時期及び支給額が一定の要件に該当するか否かにより判断

すべきこととなるところ、本件賞与は、損金経理により他の従業員に対する

賞与の支給時期に支給されており、また、原処分関係資料からは、本件賞与

の額が使用人としての職務に対する賞与として不相当であるか否か明らかで

なく、当審判所の調査によっても、本件賞与の額を不相当と認めるに足る

証拠は認められないから、本件賞与の額は、請求人が使用人兼務役員に対し

支給した使用人としての職務に対する相当な賞与の額に当たるというべき

である。

ちなみに、法人税基本通達9-2-4(職制上の地位を有する役員の意義)には、

「令第71条第1項第2号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる「副社長、

専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員」とは、定款等の

規定又は総会若しくは取締役会の決議等によりその職制上の地位が付与された

役員をいう。」とされています。

営業上の理由から「専務」、「常務」などの呼称、通称になっている場合も

ありますが、この場合は営業成績に応じた賞与が支給されていることも

少なくありません。

税務調査で同様の指摘を受けた場合の反論根拠として、この裁決を覚えて

おいて頂ければと思います。

 

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