行き過ぎた調査
今回のテーマは、『行き過ぎた調査』です。
東京税理士会が行ったアンケートの中に、このような項目がありました。
【質問】「税務調査における調査官の態度をどう感じたか?」
・『良い』44%
・『悪い』7%
『良い』と答えた意見のほとんどが、「法令に則した説明で納得できた」
「効率よく短期間で調査が終わった」というものでした。
調査官も調査件数を効率よくこなさなければなりませんので、
無駄に長期化させる余裕もないのが正直なところでしょう。
一方で、『悪い』と答えた意見の中には、
「納税者の説明を聞こうとしない」「法令をきちんと理解していない」
「言葉づかいなのどマナーが悪い」「高圧的な態度をとられた」などがあります。
7%とは、想像しているよりもずっと低い数字ですね。
しかし「税務調査で酷い目にあった」という話を多く耳にするのはなぜでしょう?
確かに限られた日数の中で、調査を行わなければなりません。
そのため根拠不十分で、何でも否認する行き過ぎた調査も少なくありません。
私の知人の税理士の話では、朝7時に経営者の自宅と関連会社すべてに一斉に税務調査が入られたというケースがあったそうです。
まさに”狙い撃ち”をされたのでしょうね。
経営者は、会社の方の対応に追われたため、奥さんがひとり
自宅で大勢の調査官に囲まれてしまいました。
「金庫の中をすべて見せて下さい」
「まだ見せていない通帳はどこに隠しているんですか?」
と高圧的な態度で、下着をしまっているタンスまで
全部ひっくり返してしまったそうです。
調査官とは言え、男性の前でそのような辱めを受けたら
さぞ辛かったことでしょうね。
泣きながら訴えたそうですが、それでも調査の手は緩めなかったそうです。彼が経営者宅に到着したときには、奥さんは憔悴しきっていたそうです。
若い調査官は功を焦るばかりに、根拠のないことを無理に押し通そうとします。法令の理解力も乏しく、調査の手加減もできません。
あくまで税務調査であって、捜査ではないのです。
そこを勘違いしてしまっているのでしょう。
調査官という仕事を続けていると、突然、偉くなったと感じる瞬間があります。このため言葉使いの悪い調査官が少なからずいます。
税務署に寄せられるクレームで一番多いのがこのケースです。
非常につまらないことが、反って税務調査をややこしくしているのです。
調査による修正額が減ることは、これまでの税務行政の効果があったからです。本来であれば、歓迎すべきことでしょう。
掲げる理想とは反することをして、一体何の徳があるのか?
『行き過ぎた調査』の相談を頂くたびに切ない気持になります。
納得できない税務調査であれば、法令に則りきちんと反論して下さい。
それでも埒が開かない場合は、税務署長宛に抗議の書面を送るのことも必要です。
税理士は楯となり、『行き過ぎた調査』から納税者を守らなければなりません。
※2010年5月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
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