親族間における路線価での土地売買は問題ないのか?
※2018年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「親族間における路線価での土地売買は問題ないのか?」ですが、
東京地裁判決(平成19年8月23日)を取り上げます。
今、私も提案している案件があるのですが、
親族間で土地を売買することがあります。
ちなみに、前提条件、私の提案している方法は下記です。
〇 ある不動産が夫婦の共有になっている。
〇 父親と息子の関係は問題ないが、母親と息子は仲が悪い。
〇 父親の意思としては、父親の他界後、
この不動産を息子に守り続けてもらいたい。
〇 父親持分については、遺言書を書く。
〇 母親持分については、父親の死亡を停止条件として、
母親と息子で停止条件付の売買契約書を締結しておく。
この状況において問題となるのが、「売買金額」です。
基本的には「時価」であるべきなので、私は下記方法を提案しました。
〇 恣意性のない不動産鑑定を行ない、これをベースに考える。
〇 現状の路線価と売買契約が発効した時点の路線価の変動率を
上記鑑定評価額に反映する。
〇 この内容、計算方法を売買契約書に明記する。
これであれば、正当な方法ですし、
売買金額に関して争う余地もありません。
しかし、当事者には「もう少し安くしたい」という意向があります。
この場合、「売買契約が発効した時点の路線価による評価額」を
売買金額とすることは可能なのでしょうか?
まず、前提となる相続税法第7条(贈与又は遺贈により
取得したものとみなす場合)を見てみましょう。
著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、
当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、
当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の
評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により
評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から
贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により
取得したものとみなす。(以下、略)
では、路線価を売買金額として採用することが
「著しく低い価額の対価」に該当するのでしょうか?
これに関して争われたのが上記裁判ですが、「相続税法7条に規定する
『著しく低い価額の対価』には当たらないとされた事例」です(確定)。
〇 相続税評価額と同水準の価額かそれ以上の価額を対価として
土地の譲渡が行われた場合は、原則として「著しく低い価額」の
対価による譲渡ということはできず、例外として、何らかの事情により
当該土地の相続税評価額が時価の80パーセントよりも低くなっており、
それが明らかであると認められる場合に限って、「著しく低い価額」の
対価による譲渡になり得ると解すべきである。
〇 もっとも、その例外の場合でも、さらに当該対価と時価との開差が
著しいか否かを個別に検討する必要があることはいうまでもない。
〇 被告(見田村注:国税)の上記主張は、相続税法7条自身が、
「著しく低い価額」に至らない程度の「低い価額」の対価での譲渡は
許容していることを考慮しないものであり、妥当でない。
〇 時価の80パーセント程度の水準の対価であれば、上記の意味での
「第三者」との間で売買が決して成立し得ないような対価である
とまでは断言できないというべきである。
〇 相続税法7条は、当事者に租税負担回避の意図・目的が
あったか否かを問わずに適用されるものである。
ということで、本事例においては、納税者勝訴で確定し、
基本的には路線価での売買でも問題はないのです。
しかし、私の事例においては「母親と息子の仲が悪い」という前提です。
そのため、「売買金額となる路線価とはいくらなのか?」ということが
固定されず、結局は争いになる可能性を残しています。
そのため、私は不動産鑑定により、売買金額を固定した方がいいと
提案しているのです。
もちろん、現状の路線価による評価額をベースに
路線価の変動率を加味することも正当ではあると考えますので、
これも併せて検討はしています。
停止条件付の売買かどうかはともかくとして、
親族間で土地の売買をすることもあるでしょうから、
本判決の内容をご参考になさってください。
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