課税庁側に違法性を反論するには?
今回は『税務調査と課税処分の違法性』です。
さて今回のメルマガは、税務調査の違法性と、その調査で行われた課税処分の違法性は連動するのかどうかです。
つまり税務調査の手続きにおいて違法性があったとするなら、
その調査において行われた課税処分(更正・決定等)に違法性が
連動するのかどうかです。
このメルマガでは常に、税務調査の手続きにおける違法性を、
また違法性がないにしても課税庁が守るべき内部規律に関して
書いてきました。
例えば税務調査における、質問検査権の権限と範囲、
調査理由の開示、事前通知の義務、反面調査等々…
税務調査の手続きにおいて違法性がある場合、
課税処分に連動するかどうかは3つの学説が存在します。
①客観的な所得等が正しければ、
課税処分の取消事由にはならないと考える消極論
②調査手続に違法性があれば、
課税処分の取消事由になると考える積極論
③調査手続の違法性が重大な場合にのみ、
取消事由となると考える折衷論
判決を調べてみてもそれぞれ意見がバラバラなのですが、
③がある程度有力だと言えます。
金子宏教授は「租税法(第8版増補版)」(弘文堂)
608ページで下記のように書いています。
「質問・検査が違法に行われた場合に、これに基づく
更正・決定が違法となるかどうかについては、見解の対立がある。
(中略)
質問・検査がその前提要件を欠く場合
(たとえば相手方の意に反して強行した場合)
など著しい違法性を有する場合は、それに基づく
更正・決定は違法になると解すべきであろう。」
つまり手続きが「著しい違法性を有する場合」
であれば課税処分の違法性を問えるということです。
私が相談を受けました実例で言いますと、
税理士がいない間に、社長が申述書にサインを
してしまった場合に、重加算税の取消が
認められるかどうかの問題があります。
私の考えによると、この課税処分の取消を
勝ち取るのは相当難しいと言えます。
なぜなら実際に社長が申述書の内容を認めたから
サインをしたのであって、税理士の立会がないことは
違法性が著しいとは言えないから、と考えます。
税務調査の手続きにおいて違法性があると思った場合は、
それに連動する「課税処分に至るまでに」いかに課税庁側に
その違法性を反論するかが大事なのであって、
実際に行われた課税処分の取消を、
手続きの違法性を理由に訴えるのは難しいのです。
“反論するなら根拠をもって早急に!!”
を実行していただきたいところです。
※2011年1月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
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