調査か調査でないか①
今回のテーマは「調査か調査でないか①」です
税理士事務所として税務署との関わり合いは、
当然税務調査だけではないわけです。
5月末ごろに税務署から増えるのが「依頼文書」です。
納税者には「お尋ね」が発送され、税理士事務所には
申告内容に関する問合せの電話が入ることもあります。
また、未提出であれば税理士事務所には「関与先名簿」や
「従業員名簿」の提出を求められることが通常です。
これらの文書依頼に回答しなければならないのか?
私によく来る質問です。
さて、この問題については2013年の通則法改正によって新たに整備
されたことでもあるため、再度整理して理解する必要があります。
究極の論点は、税務署からの文書依頼などの行為が
「税務調査に該当するのか」「税務調査に該当しないのか?」
その区分なのです。
この区分によって、結果的に
①回答義務があるかどうか
②加算税が賦課されるかどうか
の大きく2つの対応が変わってくるのです。
今週は①についてのみ書きますが、
次回では②について書きます。
「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について
(事務運営指針)」をご覧ください。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sonota/120912/index.htm
ここには、このように明記されています。
第2章 基本的な事務手続及び留意事項
1 調査と行政指導の区分の明示
納税義務者等に対し調査又は行政指導に当たる行為を行う際は、
対面、電話、書面等の態様を問わず、いずれの事務として行うかを
明示した上で、それぞれの行為を法令等に基づき適正に行う。
(注)1 調査とは、国税(法第74条の2から法第74条の6までに掲げる税目に限る。)に関する法律の規定に基づき、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で当該職員が行う一連の行為 (証拠資料の収集、要件事実の認定、法令の解釈適用など)をいうことに留意する(「手続通達」(平成24年9月12日付課総5-9ほか9課共同「国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達」(法令解釈通達)をいう。以下同じ。)1-1)。
2 当該職員が行う行為であって、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的で行う行為に至らないものは、調査には該当しないことに留意する(手続通達1-2)。
まず、「税務調査」なのか「行政指導」なのか区分することが大事です。
(これは次回「調査か調査でないか②」にも通じる基本的な概念です)
この事務運営指針を読んでわかることは、
・区分については税務署側が明示すべき
(今年から適用になったルールです)
→わからない場合は税務署に聞けばいいのです
また税務署が明示しない場合は事務運営指針違反です
・明らかな税務調査以外は行政指導
→「お尋ね」などはすべて行政指導に該当します
ここで回答義務の話に戻りますが、
税務調査=受忍義務があるため回答義務がある
行政指導=任意のため回答義務はない
となります。
また、法律的にはこうなっていても、お尋ねなどを
回答しないと税務署に目をつけられると思っている
税理士も多いようですが、これは間違いです。
行政手続法第32条(行政指導の一般原則)
2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
と明記されています。ここから、行政指導(任意)に対して
回答しなくても一切不利益な取扱いはされないのです。
(されたとしたら、行政手続法違反となります)
調査なのか、調査でないのかを区分できれば
回答しなければならないのかどうかを
判断することは容易なのです。
次回「調査か調査でないか②」では、加算税に関して区分の解説をします。
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2013年5月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。