調査と行政指導の区分
※2015年11月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
私がセミナーやメルマガで何度説明しても、
なかなか理解されないのが「調査と行政指導の区分」。
税務署による「似たような行為」であっても、
その結末が修正申告であれば、
(税務)調査 ⇒ 加算税が課される
行政指導 ⇒ 加算税は課されない
という、大きな違いが生じます。
(過少申告加算税10%はもちろん、
重加算税35%の場合は大きな税額相違になります)
事前通知があれば税務調査で、なければ
行政指導と考えている税理士も多いように思いますが、
これは間違っています。なぜなら、
事前通知がない=無予告調査も存在するからです。
その一方で、税務署から連絡があって誤りを
指摘されれば、それは結果として調査に該当する、
と思い込んでいる税理士もいますが、それも違います。
なぜなら、税務署から誤りの指摘があったとしても、
行政指導に該当する場合もあるからです。
では、下記のようなケースは、調査に該当するか、
行政指導に該当するか、どちらでしょうか?
「提出した申告内容について、税務署から
電話連絡があり、内容に関して質問を受けたのですが、
誤りがあることが判明し、修正申告を提出した」
このケースでは、電話連絡の際に「これは調査
(質問検査権の行使)です」と言われていなければ、
行政指導に該当するものと「思います」。
なぜなら、税務署からの電話連絡の目的が、
「納税者の方に対して自発的な見直しを要請した上で、
必要に応じて修正申告書の自発的な提出を要請する場合」
に該当すると考えるからです。
「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問2
https://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm#a02
では、このようなケースはどうでしょうか?
「税務署から郵送物が届き、該当する書類を持って
税務署に来るように要請があり、税務署に行った。
その中で誤りがあることが判明し修正申告を提出した」
答えは・・・調査か行政指導かわかりません。
郵送された書面の中に、「(国税通則法第74条の2
に基づく)質問検査権の行使」と記載されていれば
これは税務調査の一環でしょうし、記載がなければ、
先の例と同じく、行政指導に該当するものと考えます。
このように、調査と行政指導を区分することは、
外形的に見て簡単に判別できるものではありません。
なお、調査と行政指導を区分する基準として、
下記2つがありますので、ぜひお読みください。
調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)
第2章 基本的な事務手続及び留意事項
1 調査と行政指導の区分の明示
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sonota/120912/
国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達)
第1章 1-1 1-2
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/zeimuchosa/120912/01.htm#a01_1
もっとも簡単に、調査と行政指導を明確に区分する
方法は、連絡があった税務署職員に確認することです。
上記FAQ問2の答えの中にも、なお書きとして
「税務署の担当者は、納税者の方に調査又は行政指導を
行う際には、具体的な手続に入る前に、いずれに
当たるのかを納税者の方に明示することとしています。」
とされています。また、税務署職員に聞いたところ、
「これは調査です」と言っても、
その言葉を鵜呑みにする必要はありません。
調査と行政指導の区分は、上記事務運営指針と
通達に定義されており、その基準に照らして
判断すべきですから、税務署職員が調査と言っても、
行政指導に該当するケースは多いのです。
加算税部分が変わってきますので、ぜひ
調査と行政指導の区分については注意してください。
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