調査に協力的にもかかわらず…
今回のテーマは、前回から引き続きで『税務調査の国賠 -③-』です。
このメルマガでも過去に「税務調査の手続き」に関する
適法性や限度を書かせていただきました。
税務調査の手続きにおいて違法性がある場合、
当然に国家賠償法1条1項に基づいて、
賠償請求が可能なのですが、判例等を見てみると、
納税者勝訴の例は非常に少ないようです。
しかしこれは、税務調査の手続きにおいて
国賠で訴える納税者が、反国税団体の帰属者か、
そうでなくとも税務調査において必要以上に
調査を拒否した者であることも大きな要因でしょう。
例えば、平成5年3月11日最高裁判決において、
納税者の税務調査への協力が得られないため
反面調査によって収入金額を把握して更正処分したことに対して、
「国家賠償法上の違法性がない」としたものが有名ですが、
これは納税者が税務調査に非協力的であったため、
納税者敗訴は当然の結論かと思います。
しかし逆に、納税者が調査に協力的であるにもかかわらず、
納税者の了承なく反面調査を実施し、
納税者の信用が失墜することで、直接的・間接的に
損害を被った場合は、国賠の可能性大なのです。
納税者が協力的であり、帳票類を提示しているのであれば
本来反面調査は不要なはずです。
しかしながら、調査官の納税者に対する「あらぬ」疑いのために、
納税者の了承なく実施される反面調査は「不当性が高い」と
言わざるを得ません。
(反面調査であっても、あくまでも税務調査の
一環であるため、違法性は問えません)
反面調査が必要なのであれば、調査官はその必要性を
納税者に説明し、納税者がその必要性に納得できるのであれば
了承するはずです。
ここでは反面調査を主に書いてきましたが、
全ての「税務調査の手続き」において最高裁は、
「納税者の非協力と税務署長の負担する義務は、
それに応じて縮小する」と述べています。
つまり、納税者の税務調査に対する非協力の程度が小さければ小さいほど、
課税庁の負担すべき義務は大きくなるのです。
税務調査に協力的であるにもかかわらず、
調査官が納税者の権利を侵害するような行為を行おうとした場合は、
「国賠にかけますよ」と税理士からきちんと主張していただきたいものです。
※2011年2月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。