調査官が否認指摘するその根拠は何なのか?
※2016年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
私は(主にメールですが)、税務調査に関する相談を
年間に500件ほど受けています。
その多くの質問内容は、「○○と否認指摘されました。
どのように反論すればいいですか?」というものですが、
その中で調査官が「何を根拠に」その否認指摘をしたのかが
わからない(税務調査の中で聞いていない・確認していない)
ものがほとんどです。
否認指摘の根拠が明確になれば、それに反論するのは
それほど難しくないと私は考えています。
その一方で、否認根拠が明確でない限り、
反論方法を考えるというのは不可能とも考えています。
最近実際にあった、具体例な質問事例を取り上げてみます。
「社長の自宅から駅までの通勤費として利用したタクシー代
(旅費交通費で処理)60万円を、役員賞与として
否認指摘を受けたが、どのように反論したらいいでしょうか?」
この質問は、「なぜ役員賞与になるのか?」が
明記されていませんでしたが、実際に税務調査の中で
その根拠が明示されたかどうかは不明です。
おそらく、調査官の言い分を解釈するにこういうことでしょう。
(私の勝手な解釈です)
「社長が自宅から駅までタクシーを利用したのは、
本人が楽をしたいからであって、事業関連性がないから
経費ではなく、個人的支出と考えるべき」
もし、調査官が本当にこういう根拠として
否認指摘をしたのであれば、反論は簡単になります。
なぜなら自宅から駅までのタクシー利用について
「事業関連性」を主張すればいいだけだからです。
私は下記のように回答しました。
「休日を除き仕事をしているときは「自宅を出たときから」
業務範囲のはずです。だからこそ通勤費用は損金になるわけです。
それが、自宅⇔駅間を徒歩にしようが、バスを使おうが、
タクシーを使おうが、駅⇔自宅間の交通手段によって
損金になるかならないかは決まらないはずです。
その日は土砂降りで、カバンの中に仕事関連の重要な書類が
入っていました。いつもは徒歩だけど、その日はタクシーで・・・
と考えれば、当然に損金という話です。
それに頻度や金額は関係ないでしょう。こう考えると、
役員に対する経済的利益に該当せず、旅費交通費となります。」
上記実例のような否認指摘は、税理士であれば
「何となく」理解できる(できてしまう)ため、
調査官の言い分を「何となく」受け入れてしまう
ことが、実際は多くあるものと思います。
しかし・・・です。
この「何となく」を明確にしてみると、
調査官の主張・言い分がおかしい・間違っている
ことも、実際には多いわけです。
税務調査で否認指摘を受けたら、調査官に対して
「なぜそのように考えるのか、根拠と理由を教えてください」
と確認するのを癖にしてください。
こうするだけで、否認指摘の根拠が明確になり、
反論を考えるのがグッと楽になるはずです。
ぜひ、実践してください。
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