調査官が嫌がる理由附記
※2018年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
国税は7月3日で異動の内示、7月10日で
異動ですから、税務署内もこれからの
税務調査に本格的に乗り出す時期です。
6月までの前事務年度の調査で、残念ながら
(増額)更正を受けた事案もあろうかと
思いますので、今回は更正にかかる
「理由附記の程度」について解説します。
税務調査において調査官が、修正申告ではなく
更正を嫌がる理由はいくつか考えられますが、
その1つに「理由の附記」が挙げられます。
増額更正する場合は、税目を問わず
理由附記が必要となっていますが、
更正の通知書に附記する理由文書は
そうそう簡単に書けるものではありません。
まずは、具体的な事例を挙げましょう。
「更正通知書に付記した理由に不備があるとした事例」
(公開裁決事例 平成24年4月9日)
http://www.kfs.go.jp/service/JP/87/14/index.html
(要旨)
原処分庁は、更正通知書に付記した理由については、
架空の資産(建物附属設備)に係る減価償却費は
損金の額に算入されないという法的評価を行った
ものであるから、更正の理由付記に求められる要件を
満たしている旨主張する。しかしながら、
本件更正処分の態様は、請求人の固定資産台帳の
記載を認めず、建物附属設備を架空の資産であると
判断したものであるから、帳簿の記載自体を
認めないで更正処分を行う場合に該当するところ、
当該更正通知書に付記された理由は、
どのような根拠で架空の資産と判断したのか
について資料の摘示がなく、その判断過程も
記載されていないことから、法人税法第130条
《青色申告書等に係る更正》第2項に規定する
要件を満たさない違法なものである。
この裁決文にあるように、理由附記には
〇どのような根拠で更正したのか?
〇その判断過程も記載する必要がある
とされており、理由附記の【程度】を
満たさない場合は、それだけを理由に
課税処分が取り消されることにもなる、
という非常に重要なものなのです。
国税の内規では、下記のようにあります。
「税務調査手続等に関するFAQ(職員用)」
(平成24年11月 国税庁課税総括課)
問5-22 理由は、どの程度記載すればよいのか。
(答)
改正通則法第74条の14第1項により、
国税に関する法律に基づき行う処分について、
行政手続法第8条又は行政手続法第14条に
基づく理由の提示を行う場合には、
行政庁の判断の慎重を担保してその恣意を
抑制するとともに、処分の理由を相手方に
知らせて不服の申立てに便宜を与えることに
あるという趣旨を踏まえて、いかなる
事実関係に基づき、いかなる法令
(処分基準が公表されている場合には
その基準を含む)を適用して処分したのかを、
納税義務者がその記載内容から了知し得る程度
に記載する必要があります。また、
処分の相手方が処分の理由となるべき事実を
知っていたとしても、理由提示義務の程度が
緩和されることはありません。
これを簡易的に解釈すると、理由附記とは
【その調査の内容を知らない第三者が
理由附記を見ただけで処分の理由がわかる】
程度ということになります。
単純に、否認の根拠となった法令などを
列挙するだけではダメということです。
税務調査の現場では、口では何とでも言える
調査官も、更正となれば程度をクリアした
理由附記の文書を書くことは相当困難、
ということがおわかりいただけるとかと思います。
言い方は失礼ですが、「口八丁」な
調査官ほど理由附記が書けずに
更正できないという現実は知っておくべきです。
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