調査官が指摘する更正の請求の取下げに応じないことが大事
※2021年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
今回は、更正の請求をきっかけとして税務調査に
入られた際、調査官から「更正の請求を取下げてください」
と言われた場合の対応について解説します。
なお、同じような内容を今年4月14日の本メルマガ
「税務署が要請する取下げに応じる実益はない」
でも解説しましたが、質問・相談が多く、
かつ重要な論点なので実例を含めて解説します。
まず、先日実際にあった質問・相談を紹介します
(なお、前提事実はあえて改変しています)。
【実例】
・債権がある取引先の破産を直近で知った
・基本通達9-6-1を根拠に更正の請求をした
・税務調査に入られ、調査官から「9-6-1には
破産が含まれていないことから更正の請求を
取下げてください」と指摘された
・調査官は「9-6-2から当期(進行期)の損金
として計上してください」としている
・ただし、顧問税理士としては調査官の指摘
については懐疑的に考えている
さて、このように更正の請求を機として
調査が入った事案においては、更正の請求の
取下げを要請されることがあるわけですが、
どのような判断・行動をすべきでしょうか。
ここでお伝えしたいのは、更正の請求の内容が
明らかに間違っていると判断したとき以外は
取下げをしない方がいい、ということです。
本来の手続きとして、更正の請求が法的に
通らないのであれば、税務署は
「更正をすべき理由がない旨の通知」をし、
納税者としてはその処分(却下)に対して
不服申立てするかどうかを判断すればいいのです。
上記の実例でいえば、
●更正の請求を取下げ(撤回)した
●後になって9-6-2の処理が認められない
●かつ9-6-1の更正の請求の期限を徒過した
(取下げすれば当初の更正の請求は無効)
となれば、納税者に不利益しかありません。
もう少し深く考えると、「更正の請求が通るか
通らないかわからない段階で当期の申告期限を
迎える場合はどうするのか」と聞かれそうですが、
その場合は、
・更正の請求を取下げしない(まま)
・当期の申告で9-6-2を根拠に損金算入
・更正の請求が認められれば当期分を修正申告
・更正の請求が通らなければ不服申立てをするか、
9-6-2を根拠にした損金処理で通すかを選択
とすればいいわけです。
ここで最悪のシナリオは「更正の請求を取下げし、
かつ9-6-2が認められない」ケースですから、
調査官の指摘に沿わない方がいいわけです。
私が上記で伝えていることは、調査官の
個人的な見解を信じる必要性はなく、
税務署の公式見解を待てばいい、ということに
等しいので、むしろシンプルな判断です。
調査官の個人的な判断を信じたところで、
それが間違っていても救済されるのは
誤指導による加算税くらいのもので、
本税部分は永久に取り返せない可能性があります。
特に更正の請求の取下げは、自ら撤回をして
当初から更正の請求をしなかったことと
同じ効果になりますから、ぜひ注意してください。
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