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2024.11.29

調査官に録音を止める・データ削除を要請された場合の現実的対応方法

※2023年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜の本メルマガから引続き「税務調査を録音すること」について、
今回は調査官から録音を止めるよう、もしくは録音したデータを
削除するよう求められた場合の、現実的な対応方法を解説します。

まず前回の復習を兼ねますが前提として、納税者が税務調査を録音する
ことについて、調査官が「録音を止めるように要請する」ことや、
「録音している限りは税務調査をしない」行為は許容されます
(この要請自体は調査手続き違反にならないと解釈されます)。

一方で、納税者として、調査官のこの要請に応えなければならないか、
という論点ですが、税務調査を録音してはならないという
法律規定はない等、録音自体は許されると考えられます。

しかし、現実的に考えた場合、調査官の「録音しないでください」
という要請に対して、「録音して何が悪いんだ」「その根拠を出せ」と
拒否し続けた場合、調査官は税務調査を進めないで帰ることになり、
このことが納税者の「受忍義務違反」を問われるリスクが生じます。

「レコーダーを作動させることに固執し帳簿書類を提示しなかったことは
青色申告の承認の取消事由に該当するとした事例」
(平成24年6月1日公開裁決事例)
http://www.kfs.go.jp/service/JP/87/10/index.html
【要旨】
請求人が主張する帳簿書類の提示は代理人である税理士が
レコーダーを作動又は作動させる準備がされた状況下でのことである
ところ、本件調査においてレコーダーによる会話の録音が必要で
あったとは認められず、調査担当職員が当該録音され得る状態での
帳簿書類の検査を実施しなかった措置は相当である。そして、
調査担当職員が、当該税理士に対してレコーダーによる会話の
録音がない状態で帳簿書類を提示するよう求めたにも関わらず、
当該税理士は、レコーダーを作動させることに固執し帳簿書類を
提示せず、また、請求人も、当該税理士に任せているとして帳簿書類を
提示しなかったのであるから、請求人は、正当な理由がないまま
帳簿書類を提示しなかったことになるのであり、このことは、
所得税法第150条《青色申告の承認の取消し》第1項第1号に
規定する青色申告の承認の取消事由に該当する。

この裁決事例のように、納税者が録音にこだわることによって、
【帳簿書類の提示をしなかった】場合、青色取消しのリスクが
生じることは認識しておく必要があります。

なお、税務調査における受忍義務違反は青色取消し以外にも
仕入税額控除の全額否認も想定されます。

「税務調査の受忍義務違反は結局こうなる」
https://kachiel.jp/?p=16415

以上から、(前回も結論で書いたように)税務調査を
納税者が録音したい場合、

●調査官に言わない(どうせ事前の承諾は得られない)
●バレないように録音する(机の上に伏せたスマホなど)

ことをお勧めするのですが、録音行為を調査官に伝えた、
もしくは録音行為がバレた場合、録音にこだわって帳簿等の提出を
拒否することはないようにしなければなりません。ですから、
こういうケースは録音を止めた方が得策となります
(押し問答を続けると結局は納税者が不利になります)。

また、税務調査を録音していた事実が、後になって(終盤に)
調査官にバレた場合に、録音データの消去を求められる
ケースもあります。つい先日もそのような質問がありました。

このようなケースは、税務調査の過程ですでに帳簿等を
提示している限り、上記のように受忍義務違反を問われることは
ありませんから、データ削除要請に応える意味がなく、
データ削除をする必要性はないでしょう。

一方で、録音データの削除にこだわる調査官も多く、
削除しない限り調査を終結させないと言われるなど、
調査官のこだわりが強い場合で、かつ、納税者が録音した
内容・過程において、調査官の言動等に問題がなかった
(結果としては録音する意味もなかった)ということであれば、
録音データに固執する理由もないでしょうから、

「録音データ削除に応じる義務もないが、調査が終わらないことは
問題だとも認識はしているので削除します」

と、あえて譲歩するという対応も現実的だとは考えます(もちろん、
今後録音データを提示する必要がある内容の調査は除きます)。

税務調査を録音する行為は、納税者として法律違反とは
ならないものの、調査官(税務署)側は問題視してきますので、
録音に固執するあまり、受忍義務違反と認定されないように
対応する必要がありますので、ぜひ注意してください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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