調査官の依頼を正しく断る方法 -4-
今回は『調査官の依頼を正しく断る方法 -4-』です。
さて、今回は「従業員にヒアリングさせてください」
と調査官に言われた場合の断り方です。
税務調査で否認指摘をよく受けるのが過大役員報酬でしょう。
特に同族会社において、妻や子供が役員になっており、
勤務実態があるかないか怪しいのに報酬が発生している場合。
税務調査はあくまでも「事実認定」が最後の勝負。
調査官も、親族の役員報酬や給与を否認するためには
従業員へのヒアリングを行って、客観的な視点から
裏付けを取る必要があります。
会社側にしたら、調査官が従業員にヒアリングしてしまうと
「うちの会社は何か悪いことをしているのではないのか?」
と変に怪しまれ、会社に対するロイヤリティーが下がりがち。
ここではいつものように税法を確認してみます。
法人税法第153条「当該職員の質問検査権」では
下記のように記載されています。
「国税庁の当該職員又は法人の納税地の所轄税務署
若しくは所轄国税局の当該職員は、法人税に関する調査について
必要があるときは、法人(略)に質問し(略)」
つまり法人税の税務調査においては、調査官は法人に対して
質問検査権を有しています。
では、この「法人」とはどこまでが範囲なのか?
この「法人」を定義する条文はありませんが、
一般的に「法人」と解釈するに、
法人が雇用している従業員も「法人」に
含まれると考えるのが素直な見解でしょう。
というわけで結論からするに、法人税の調査においては
従業員へのヒアリングは「法律上」断ることができません。
しかし「実務上」は取扱いが違っています。
国税当局も調査官への教育では、
「従業員等へ質問する場合には、調査を円滑に進めるため、あらかじめ
代表者の了解を得た上、代表者から協力するよう指示してもらう」
としているのです。
※調査官への教育マニュアルをそのまま抜粋した文言です
これは2つの問題をクリアにするためだと思われます。
①調査官が従業員に勝手にヒアリングし、従業員が会社が
危ないと勘違いして退職等するリスクを回避するため
②会社の状況を従業員が知ることになると、守秘義務を
守っていないのと同じ状況になり得るから
まとめますと「従業員にヒアリングさせてください」と依頼された場合、
上記①②からいったん反論してください。
その上でさらに調査官に依頼された場合は、「代表者の了解をもらうよう
教育されているはずだろう?」と聞いてみてください。
これで勝手にヒアリングされるリスクはほぼなくなるはずです。
※2010年11月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。