2015.04.20

調査官はウソをつく

税務調査の対応でもっとも大事なことは、
調査官から受けた否認指摘の「根拠を明確にする」ことです。

「当り前でしょ?」と思われるでしょうが、
ほとんどのケースで否認根拠を明確にしていないはずです。

今月相談された内容でこのような事案がありました。
(内容は大幅に簡素化しています)

「税理士が変わったので、過去の決算書等を精査したところ、
BSに計上されている資産が実際にはありませんでした。
そこで過去の除却損を、気付いた期の特損に計上したところ、
税務調査で否認指摘を受けました」

確かに否認指摘される理由は「何となく」わかります。
では本当に「気付いた期に計上することは許されない」のでしょうか?
どの法令をもって、調査官はこれを否認する(できる)でしょうか?

では、除却損の計上漏れに気付いた際に、
更正の請求(その当時は嘆願)しておけば認容されたのか?

気付いたことに対して「やむを得ない事情」があれば、
気付いた期の特損として計上できるのか?
(実際にこの事案は、税理士と経営者が同時に変わっています)

結局のこの事案は「うやむや」なまま終わってしまいましたが、
否認指摘の根拠も「うやむや」なままでした。

例えば、このような否認指摘を受けたらどう対応しますか?

社長の妻が非常勤役員になっており、月額50万円の役員報酬が
高いと言われ、過大役員報酬として否認指摘を受けました。
なお、調査官が役員報酬を高いという理由は
「同規模他社と比べて、非常勤役員の報酬としては高額」
と言われています。

おそらくほとんどの税理士は「確かに高いとは思うけど・・・」と考え、

・仕事内容が多いこと
・会社への貢献度が高いこと

あたりを根拠として反論するのではないでしょうか?
これは(一義的には)間違った対応です。

正しい対応方法は、まず

「同規模他社と比べて、非常勤役員の報酬としては高額だと
おっしゃいますが、では2点明示してください。
1点目は、同規模他社とはどのような基準で選びましたか?
2点目は、同規模他社が非常勤役員に支払っている
役員報酬の平均金額はいくらなんですか?」

と質問してみることです。

おそらく、ここですぐに答えを返せる調査官はいません。
なぜなら、同規模他社と比べて(不相当に)高額と言っている
こと自体に、何の根拠もないからです。

ここに根拠があるとするなら、あくまで調査官の経験論であって、
実際に同規模他社を抽出して、役員報酬の平均金額を
算出したことなど無いのです。
算出しているならすぐに回答できるはずです。

「否認根拠を明確にする」とはこういうことです。
調査官はそれらしいことを言ってきて、
あたかも当然のように根拠を言ってきますが、
それが正しい保証などまったくないのです。

調査官にとっては、ウソをついて否認指摘している
つもりはないのでしょうが、これでは実質的に
ウソ(かまかけ)と同じでしょう。

調査官の言っている否認根拠を鵜呑みにすることなく、
否認根拠を法令等で明確化しなければ
適正な反論はできないのです。

 

※2012年5月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

また、ブログの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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