調査対象年分が延びる要件
※2014年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
「事前通知の内容では、調査対象期間が3年と言われましたが、調査の中で、あと2年分追加(つまり合計5年)したいと調査官から言われました。安易に調査対象年分を延ばされるのであれば、事前通知の意味もなくなると思います。
調査官の勝手な判断で、調査対象年分を延ばすことは許されることなのでしょうか?」
この疑問は、もっともなことでしょう。
まず確認しておくと、税務調査の対象期間については、以前配信したメルマガ「税務調査の遡及年数」において解説している通り、法人税・所得税などは、原則として5年遡ることができます。
(脱税に関しては、最大7年)
さて、上記の疑問を解くにはまず法律を確認する必要があります。
国税通則法第74条の9(納税義務者に対する調査の事前通知等)
4 第1項の規定は、当該職員が、当該調査により当該調査に係る
同項第3号から第6号までに掲げる事項以外の事項について非違が疑われることとなつた場合において、当該事項に関し質問検査等を行うことを妨げるものではない。この場合において、同項の規定は、当該事項に関する質問検査等については、適用しない。と法律規定がなされており、調査の過程で調査対象年分を延ばすには、
「非違が疑われることとなつた場合において」
という要件が存在することがわかります。
また、事務運営指針では合わせて、
「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sonota/120912/
下記のように規定されています。
3 調査時における手続
(2) 通知事項以外の事項についての調査
納税義務者に対する実地の調査において、納税義務者に対し、通知した事項
(上記2(3)注2に規定する場合における通知事項を含む。)以外の事項について
非違が疑われた場合には、納税義務者に対し調査対象に追加する税目、期間等を説明し理解と協力を得た上で、調査対象に追加する事項についての質問検査等を行う。
というわけで、法律および事務運営指針からもわかる通り、事前通知の段階で、調査対象年分が3年だとすると、調査の過程で「非違が疑われた場合」にのみ、4~5年前の年分を調査対象に加えることができます。
逆をいうと、この要件を満たさない限り、調査対象年分を延ばすことはできない、ということです。
実際の調査において、調査官が事前通知よりも年分を追加するよう要請してきた場合は、「どのような非違が疑われたのか教えてください」
と確認することが必要というわけです。
何の根拠もなく、調査対象期間を延ばさせることは避けるべきです。
法律と事務運営指針に要件が明文化されているのですから、
要件を確認し、根拠が薄弱であれば、しっかり断るべきなのです。
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