調査対象年分に誤りがあれば調査年分が延びるのか?
※2015年10月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
以前から本にブログおいて数回、調査対象年分が
延びる「法的要件」について配信してきました。
具体的には、事前通知において調査対象年分が
「3年(期)」とされた場合、4年(期)以上遡る場合には、
下記の法的要件を満たす必要性がある、というものです。
国税通則法第74条の9(納税義務者に対する調査の事前通知等)
4 第1項の規定は、当該職員が、当該調査により当該調査に係る
同項第3号から第6号までに掲げる事項以外の事項について
非違が疑われることとなつた場合において、当該事項に関し
質問検査等を行うことを妨げるものではない。この場合において、
同項の規定は、当該事項に関する質問検査等については、適用しない。
さて、この条文規定をサラッと読むと、調査対象年分において
誤りがあれば、それをもって調査年分が延びる根拠となるように
誤認する人が多いのですが、それは違います。
この規定はあくまでも、調査対象年分を延ばす要件ですから、
調査対象年分=誤りがある
ことが要件なのではなく、調査をしている過程で、
調査対象期間よりも前の期間=誤りがありそう
ということが、調査対象年分が延びる要件ということです。
そう解釈しなければ、事前通知の年分を超えて
調査対象期間を拡大する要件にはなり得ないからです。
このように解釈する、明確な根拠としては、
「税務調査手続等に関するFAQ(職員用)」
(平成24年11月 国税庁法人課税課)
に下記の質疑応答事例が載っています。
問1-56
事前通知した調査対象期間以外の課税期間につき、
質問検査等を行う場合とは、具体的にどのような場合をいうのか
(答)
事前通知した調査対象期間を調査している過程で非違を把握し、
その非違が認められる取引先との取引が調査対象期間よりも
前の課税期間にも存在するなど、調査対象期間よりも前の
課税期間にも同様の非違が疑われる場合などが該当します。
このあたりは、調査官も勘違いしているケースが多く、
調査対象年分に売上計上漏れがあったとして
調査対象年分を延ばそうとする調査が横行していますが、
それは間違っているということなのです。
あくまでも、
事前通知をした調査対象期間を調査した結果
⇒ 調査対象期間よりも前の期間に
非違が疑われることとなった場合
(過去に同様の取引があるなど)
⇒ 調査対象期間を延ばすことができる
という論理であることに気を付けてください。
なお、合わせて確認しておくべきこととして、
同条文には事務運営指針が存在します。
「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sonota/120912/
3 調査時における手続
(2) 通知事項以外の事項についての調査
納税義務者に対する実地の調査において、納税義務者に対し、
通知した事項(上記2(3)注2に規定する場合における通知事項を含む。)
以外の事項について非違が疑われた場合には、納税義務者に対し
調査対象に追加する税目、期間等を説明し理解と協力を得た上で、
調査対象に追加する事項についての質問検査等を行う。
と規定されており、調査官は自己の判断のみで
調査期間を延伸することはできず、説明したうえで
「理解と協力」が必要であることも合わせて覚えておくべきです。
これらの要件を満たさず、調査期間がいたずらに
延ばされるケースが多くみられます。
ぜひ、注意してください。
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