• HOME
  •  › ブログ
  •  › 調査対象年分に誤りがあれば調査年分が延びるのか?
2016.09.29

調査対象年分に誤りがあれば調査年分が延びるのか?

※2015年10月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

以前から本にブログおいて数回、調査対象年分が
延びる「法的要件」について配信してきました。

具体的には、事前通知において調査対象年分が
「3年(期)」とされた場合、4年(期)以上遡る場合には、
下記の法的要件を満たす必要性がある、というものです。

国税通則法第74条の9(納税義務者に対する調査の事前通知等)
4 第1項の規定は、当該職員が、当該調査により当該調査に係る
同項第3号から第6号までに掲げる事項以外の事項について
非違が疑われることとなつた場合において、当該事項に関し
質問検査等を行うことを妨げるものではない。この場合において、
同項の規定は、当該事項に関する質問検査等については、適用しない。

さて、この条文規定をサラッと読むと、調査対象年分において
誤りがあれば、それをもって調査年分が延びる根拠となるように
誤認する人が多いのですが、それは違います。

この規定はあくまでも、調査対象年分を延ばす要件ですから、

調査対象年分=誤りがある

ことが要件なのではなく、調査をしている過程で、

調査対象期間よりも前の期間=誤りがありそう

ということが、調査対象年分が延びる要件ということです。

そう解釈しなければ、事前通知の年分を超えて
調査対象期間を拡大する要件にはなり得ないからです。

このように解釈する、明確な根拠としては、

「税務調査手続等に関するFAQ(職員用)」
(平成24年11月 国税庁法人課税課)

に下記の質疑応答事例が載っています。

問1-56
事前通知した調査対象期間以外の課税期間につき、
質問検査等を行う場合とは、具体的にどのような場合をいうのか
(答)
事前通知した調査対象期間を調査している過程で非違を把握し、
その非違が認められる取引先との取引が調査対象期間よりも
前の課税期間にも存在するなど、調査対象期間よりも前の
課税期間にも同様の非違が疑われる場合などが該当します。

このあたりは、調査官も勘違いしているケースが多く、
調査対象年分に売上計上漏れがあったとして
調査対象年分を延ばそうとする調査が横行していますが、
それは間違っているということなのです。

あくまでも、

事前通知をした調査対象期間を調査した結果
⇒ 調査対象期間よりも前の期間に
非違が疑われることとなった場合
(過去に同様の取引があるなど)
⇒ 調査対象期間を延ばすことができる

という論理であることに気を付けてください。

なお、合わせて確認しておくべきこととして、
同条文には事務運営指針が存在します。

「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sonota/120912/

3 調査時における手続
(2) 通知事項以外の事項についての調査
納税義務者に対する実地の調査において、納税義務者に対し、
通知した事項(上記2(3)注2に規定する場合における通知事項を含む。)
以外の事項について非違が疑われた場合には、納税義務者に対し
調査対象に追加する税目、期間等を説明し理解と協力を得た上で、
調査対象に追加する事項についての質問検査等を行う。

と規定されており、調査官は自己の判断のみで
調査期間を延伸することはできず、説明したうえで
「理解と協力」が必要であることも合わせて覚えておくべきです。

これらの要件を満たさず、調査期間がいたずらに
延ばされるケースが多くみられます。
ぜひ、注意してください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。