調査時に提示する義務
※2015年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
6月中旬を迎え、ほとんどの税務調査が結了している
かと思いますが・・・まだ対応中の調査事案は
かなり重い論点を抱えているものでしょう。
さて、今日のブログは、税務調査の際に
調査官・税理士の双方が提示しなければならない
義務についてお伝えします。
こう書くと、「えっ、調査官はわかるけど、税理士に
義務があるの?」と思われるので先に解説しておきます。
税理士が税務調査に立会う(税務代理する)場合、
税理士証票を提示「しなければなりません」。
税理士法第32条(税理士証票の提示)
税理士又は税理士法人が税務代理をする場合において、
当該税務代理に係る税理士が税務官公署の職員と面接する
ときは、当該税理士は、税理士証票を提示しなければならない。
すごく基本的なことなのですが、提示しなくても
調査官にわざわざ求められることも少ないので、
提示をしないことが普通になっている税理士も多々います。
ただ、この点はきちんとしておくべきです。
なぜなら、税務調査の過程における調査官の
手続き違反等を追及した際に、自らが手続き違反
していると、やぶへびになる恐れがあるからです。
一方で、調査官側の義務としては、
国税通則法第74条の13(身分証明書の携帯等)
国税庁等又は税関の当該職員は、第74条の2から
第74条の6まで(当該職員の質問検査権)の規定による質問、
検査、提示若しくは提出の要求、閲覧の要求、採取、
移動の禁止若しくは封かんの実施をする場合又は前条の職務を
執行する場合には、その身分を示す証明書を携帯し、
関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
として、身分証の携帯・提示義務を定めています。
なお、ここにいう調査官の「身分を示す証明書」とは、
「身分証明書及び質問検査章」とされています。
調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について
(事務運営指針) 第2章 3(1)
(1) 身分証明書等の携帯等
実地の調査を実施する場合には、身分証明書及び
質問検査章を必ず携帯し、質問検査等の相手方となる者に
提示して調査のために往訪した旨を明らかにした上で、
調査に対する理解と協力を得て質問検査等を行う。
(注) 行政指導の目的で納税義務者の事業所等に往訪する
場合であっても身分証明書を携帯・提示し、行政指導で
往訪した旨を明らかにすることは必要であることに留意する。
法律規定では「提示要求があったら提示する義務がある」
とされていますが、事務運営指針では(要件なく)
「提示してから調査する」とされています。
ここにいう2つの身分証は、通常定期入れのような
黒いケースに入っており、提示された方から見て
左側:身分証明書=顔写真入り
右側:質問検査章=○○税に関する質問検査章
となっています(右左に規定はありません)。
一般的に身分証の提示は、調査官・税理士ともに
儀式的になっているのが通常ですが、
税理士としては質問検査章の「○○税」だけは
きちんとチェックしておいてください。
「質問検査章」とはその名の通り、質問検査権を
持っている人間に与えられるものです。
税務署の職員であれば全員が質問検査章を
持っているというものではありません。
(徴収官や内部担当は持っていません)
また、質問検査章を提示する義務があることに
関連しますが、質問検査章を持っているからといって、
どの税目にも質問検査権があるわけではありません。
質問検査章に記載されている「○○税に関する」
に対してのみ質問検査権があるということです。
ここに表記されている税目以外には質問検査権が
ないのですから、例えば法人に対する調査で、
個人事業主時代のことを質問する権利は、あくまでも
質問検査章に「所得税」が載っていなければ
違法な行為になるということです。注意してください。
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