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2015.12.18

請求書がなければ仕入税額控除は認められないのか?

消費税率のアップを直前に控え、駆け込み需要を含め、
にわかに世間が騒がしくなってきました。

消費税率が上がり続けるとともに、税務調査における
消費税の否認指摘も確実に増えるものと思います。
(単純に増差税額が増えますから)

先日あった質問では、このような内容がありました。
(多少内容を変えて書いています)

「取引先と契約書を締結し、その金額通りの内容で
毎月支払い処理をしているのですが、請求書がないということで、
消費税の仕入税額控除が認められないと指摘されました。
これは認められないのでしょうか?」

法律を確認すると、消費税法第30条第7項において、
事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る
「帳簿及び請求書等」を保存しない場合には、当該保存がない
課税仕入れの税額については適用しない旨規定しています。

さらに、消費税法第30条第8項は、この「帳簿」について、
いわゆる「4要件」を定めているわけです。

帳簿の4要件を満たしているとして、保存義務があるのは
「帳簿及び請求書等」ですから、取引先に支払いをするたびに
「請求書」がなければ仕入税額控除が認められないのでしょうか?

ここに、型枠工事業を営む個人事業主が
仕入税額控除を否認された事案で、別途つけていた「出面帳」
から、支払内容等がわかるだろう、ということで
納税者側が勝った公開裁決事例があります。

※失礼なことを理解して書くと、こういうことに
 ずさんな業種として土木・建築業が筆頭に挙げられますが、
 出面帳は有効ということを特に知っていただきたいです

「請求人が提示した出面帳に記載された事項のうち、
法定記載要件を具備している部分については、課税仕入れ等の
税額に係る帳簿に該当するとして、消費税の納付すべき税額の計算上、
当該部分に係る仕入税額控除の適用を認めた事例」

http://www.kfs.go.jp/service/JP/82/19/index.html

この裁決事例では、争点が他にもあるのですが、
仕入税額控除が認められるかどうかだけに焦点を当てると、

【ポイント】

・確かに、法定帳簿の4要件を満たしていない

・しかし、出面帳のうち法定記載事項のすべてを満たしていると
 認められる部分のみを法定帳簿と認めることが法定帳簿の保存を
 定めた法の趣旨に反するとはいえない

と判断されて、納税者が勝っているのです。

簡単にいえば、「帳簿が法定要件を満たしていなくても、
請求書がなくても、その他の資料から支払いの相手方・内容等が
きちんと確認できるのであれば、それでいい」
というのが「立法趣旨」だということです。

確かに考えてみると、消費税を支払った先がわからないようでは
仕入税額控除できません(させません)、が趣旨のはずです。

裏を返せば、相手方や内容等が何らかわかるのであれば、
仕入税額控除できるということでもあります。

上記の質問のように、ただ請求書がないという事実だけで、
仕入税額控除が否認されることは、実態としてはないのです。

少し話は逸れますが、請求書がない支払いがすべて
仕入税額控除できないのであれば、口座振替などで支払っている
ものはすべて仕入税額控除ができないということになります。

(これは別の論点として、請求書がないことにつき
「やむを得ない理由がある」かどうかなのですが・・・)

このような、「請求書がない」という、いわゆる
「形式基準」をもって仕入税額控除の否認指摘を
受けるケースが、今後増えると思います。

上記裁決から、「立法趣旨として、相手方が特定できない
場合には確かに仕入税額控除できないのはわかりますが、
相手方が(他の資料等で)特定さえできれば
仕入税額控除が認められるはずです」と反論すべきなのです。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

※2014年3月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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