請負か委任かで相違する売上の計上時期・基準
※2022年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
税務調査において、売上計上時期について
否認指摘を受けることが多いわけですが、
この論点に関してはそもそも、契約・受託内容を
「請負」もしくは「委任」に区分・整理することが
有効な反論根拠となることが多いです。
一般的な否認指摘は、納品・検収・契約終了時に
一括して売上計上していたのを、時間経過とともに
売上計上=期ズレ(決算月での未収計上)という
内容ですが、このような場合、契約・受託内容が
請負であることを主張できれば期ズレになりません。
この論点を整理して解説します。
一般的には「業務委託契約書」のタイトルで
契約が締結されていることが多いわけですが・・・
他者に仕事を「委託」するという行為を、
法律上2つに区分して認識することが重要です
(実務上、厳密に区分することが難しいケースも
ありますが、区分する考え方は重要です)。
【委託 = 請負 or 委任(準委任)】
請負と委任の最大の違いは【成果物があるか・
無いか】です。請負は決められた期限までに
成果物を完成させることを目的にしています。
例えば、サイトやアプリの作成、工事・建築などが
請負に当たります。成果物を納品できなければ
報酬を請求することができません。
一方、「委任」とは法律行為を委託することを
指しますが、法律行為以外でも一般的な事務を
委託することは「準委任」とされ、実務上は
委任と準委任を区分する必要性はないでしょう。
成果物がなくとも報酬を請求することができます。
サイトやアプリの作成は「請負」ですが、
納品後のメンテナンス・保守契約は
「(準)委任」に区分することができます。
税理士事務所でいうと、
●記帳代行業務や税務申告書の作成=請負
●顧問契約(税務相談など)や調査立会い=委任
と区分されます。
法人税基本通達2-1-21の7
では、請負に係る収益の帰属の時期を「原則として
引渡し等の日の属する事業年度の益金の額に算入」
と規定し、期間にわたる収益認識ではなく、
成果物の引渡し基準としています。
また、同通達では(注)1として「委任事務又は
準委任事務の履行により得られる成果に対して
報酬を支払うことを約している場合についても同様」
として、委任(準委任)契約であっても
成果報酬の設定であれば引渡し基準としています。
例えば、コールセンター業務を行っている場合、
・受電業務など月報酬が固定(1席あたり○○万円/月)
=準委任契約で、時の経過とともに売上計上
・発信業務など営業成果によって報酬が決まる
=準委任だが、契約案件など引渡した時点で売上計上
という計上基準になるという理解です。
売上計上基準を規定した法人税基本通達
2-1-21の2以降はわかりやすい規定内容
ではありませんが、少なくとも請負と委任に区分し、
請負に該当する場合、時の経過とともに
売上計上すべきと主張する調査官に対して
反論することは容易になるはずです。
なお、上記通達を解説した下記の国税庁資料も
併せて参考にすると理解は深まります。
「「収益認識に関する会計基準」への対応について
~法人税関係~」(国税庁 平成30年5月)
税務調査において、売上計上基準でモメた場合
調査官と言い分が平行線になることが多いですが、
契約・受託内容を法律的に区分しない主張をするから、
こちらの言い分が認められづらい、もしくは
調査官と論点が食い違ったままになるわけです。
ぜひ、請負と委任の区分を理解してください。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
著者情報