請願権に基づく行為
今回のテーマは、『請願権に基づく行為』です。
国税不服審判所が「先例性のある」裁決29事例を公表しました。
http://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/83.html
今回は特に、重加算税についてかなり興味深い裁決が
出ていますので、ぜひご一読をおすすめします。
さてこのメルマガでは、税務調査の否認指摘に対して納得ができない場合、
税務署に対して書面を出すことの有用性について書いてきました。
弊社にご相談いただいた事案も、その多くは「抗弁書」を作成し、
あえて文書で抗弁するという対応をとっています。
http://kachiel.jp/tax/consulting2.html
すでに本ブログの「抗弁書の出し方」では、
下記のように書いています(ポイントだけ挙げておきます)
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書面を出すということは
・証拠を残す
・否認指摘やその反論根拠を明確にする
という効果があるのですが、それらの効果をきちんと出すためには、
下記の事項を守らなければ意味がありません。
【抗弁書の提出する際に気を付けるべきこと】
①対面で説明してから抗弁書を提出する
郵送で提出せず、書面内容に齟齬がないよう説明すること。
②統括官同席で書面を出す
統括官が決裁者です。
③書面での回答を求める
回答が口頭であれば論点が不明確になりがちです。
④抗弁書への収受印は特に不要
収受印なしでも⑤でカバーする。
⑤抗弁書説明の際は録音をしておく
言った言わないを防ぎます。
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ここで、抗弁書を提出しようとすると、
「書面による提出ではなく、口頭で言ってください」
と、抗弁書の提出を拒否されるケースがあります。
これは、税務署側が書面による対応は面倒だと思っているからです。
では、税務署への書面提出が拒否された場合、
どのように対応すべきなのでしょうか?
税務署に対する(抗弁の)書面提出は、憲法と請願法の適用があります。
憲法第16条(請願権)
何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止
又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、
何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
憲法のこの規定を受けて、請願法は下記のように定めています。
請願法第5条
この法律に適合する請願は、官公署において、
これを受理し誠実に処理しなければならない。
つまり、納税者(およびその代理人である税理士)が、
「抗弁書」という名前はともかく、税務署に対して提出する書面が
請願権に基づくものである限り、税務署はそれを
「受理し誠実に処理しなければならない」のです。
少し話がそれますが、私は以前から更正の請求の期限が過ぎた場合に
提出する「嘆願書」は名前がよくないと思っていました。
「嘆願」というのは、納税者から税務署への「お願い」です。
しかし、請願権に基づく書面であれば、
実際に職権による還付をするかどうかは別にして、
「誠実に処理しなければならない」のですから、
嘆願書ではなく、請願書にすべきでしょう。
話を戻すと、抗弁書の提出が拒否されるような場合は、
「憲法および請願法に明文化されている請願権に基づく
書面なのですが、これを拒否するのですか?」と伝えることです。
もしくは、抗弁書の冒頭に、その旨を当初から記載しておくことが
有効な手段となり得ますし、書面名を「抗弁書」ではなく
「請願書」にすることも有用性が高いといえます。
請願権に基づく行為(書面提出)であれば、
税務署は拒否できないことを知っておくべきです。
※2012年1月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
また、ブログの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。