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2025.01.17

警備員における給与・外注費の区分

※2024年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜の本メルマガでは、医師における「給与か外注費」
の区分について解説しました。

さて、医師に関するそもそも論なのですが、

●医師の派遣事業は労働者派遣法において禁止されている
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000133886.pdf

●株式会社などの営利を目的とする法人は
医療(経営)を行うことができない(医療法第7条5項)

とされています。ですから、所得が高い勤務医・非常勤医師が
株式会社を設立して、給与ではなく法人の収入とすることは
認められていないことになります。

先週紹介した、非常勤医師の報酬に関する公開裁決事例
https://www.kfs.go.jp/service/MP/02/0204020000.html
の昭和62年12月25日裁決事例においても、

「病院等における請求人の従事内容は、客観的にみても
保険医である請求人においてのみなし得るものであり、
その役務の提供に対する対価報酬として受ける金員は、
当然に請求人個人に帰属すべき収入であると判断される」

として、法人ではなく個人の所得に帰属すると判断しています。

これに似た論点として、警備会社に勤務する警備員を
給与(雇用)ではなく外注費(請負)にできるのか、
があるのですが、実は警備業も上記医師(医療関係業務)
と同じく、警備員の派遣事業は労働者派遣法において
禁止されています(上記厚生労働省のサイトを参照)。

実際のところ、警備業を営む法人が警備員への支払いを
外注費として処理していたことに関して給与と否認された
最新の非公開裁決事例があるのですが納税者が負けています。

「本件警備員らは、法令上も契約上も独立した個人事業主
として警備業務に従事することが認められていなかったものと
認められ、本件警備員らに対する報酬の性質は、請求人の
指揮命令に服して、空間的、時間的な拘束を受けつつ、
労働に従事した対価であり、所得税法上の給与所得に
該当すると認められるから、請求人は所得税法183条1項
に規定する源泉徴収義務を負うとされた事例」
(令和4年1月5日裁決 F0-2-1093)

この裁決事例では、法人が警備員と「業務委託契約書」
「支払条件」と題する書面を締結しており、外形的には
税務上の要件を満たす努力をしたように推察できますが、

「請求人は、警備業務委託契約等上、労働基準法、
労働安全衛生法及び警備業法のほか、労働者の使用等に
関する法令を遂守する義務を負い、警備員に対し、
労働基準法第75条ないし同法第88条に規定する
災害補償に関する使用者の責任を負うものとされており、
警備員らに対して、使用者としての種々の法令上の責任を
負うこととなっていたものと認められる。さらに、
本件警備員らは、警備業法第4条の認定を受けておらず、
自己の名で警備業務を行うことが法律上許容されていなかった
ものと認められる。以上の点からすると、請求人は、
警備業務委託契約等において、警備員らに対し使用者としての
種々の法令上の責任を負っており、また、本件警備員らは、
法令上も契約上も独立した個人事業主として警備業務に
従事することが認められていなかったものと認められる。」

として、業法の問題から(も)外注費を否定されています。

なお、上記警備業法第4条とは「警備業を営もうとする者は、
前条各号のいずれにも該当しないことについて、
都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の
認定を受けなければならない。」と規定されているもので、
各警備員は業法における警備業の要件を満たしていない
ことを指しています。

このように医師・警備員などは、給与・外注費における
税務上の判断基準である「空間的・時間的拘束」などを
いかに満たしていたとしても、業法上の論点において
外注費になり得ない=給与と判断されることになります。

さて、来週水曜の本メルマガでは、美容師や
マッサージ師などでよく使われる「面貸し」における
給与・外注費の区分について解説します。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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