財産分与で取得した不動産の取得費は?
さて、今回は「財産分与で取得した不動産の取得費は?」です。
離婚に伴う財産分与で不動産を取得した後、
その不動産を譲渡する場合があります。
なお、前提条件として、夫から妻への財産分与(土地)とします。
その譲渡に伴う取得費は「夫が譲渡所得の計算上、譲渡収入とした金額」
であることが原則です。
しかし、
○ 元夫・・・国税不服審判所で確定した譲渡収入は2億2,925万円
○ 元妻・・・東京地裁で確定した取得費は3億5,250万円
と大きくずれた事例があります。
なお、平成3年2月28日の判決(東京地裁)で、
TAINS番号は「Z182-6665」です。
まずは事案の概要です。
○ 3/8に離婚成立、3/27に財産分与による所有権移転登記手続き完了、
7/1に当該不動産の売却
○ 元妻は取得した土地を法人(子供が社長)に3億5,250万円で売却
○ 3億5,250万円は上記法人が融資を受けるにあたり、
銀行で算定されたもの
○ 元妻は「譲渡収入=取得費」として、短期譲渡所得0円とした
○ 夫は申告を失念しており、3億5,250万円の決定処分を受け、
争った結果、2億2,925万円と確定(不動産鑑定)
なぜ、このような結果になったかというと、
○ 元夫・・・当該土地を単独で評価
○ 元妻・・・当該土地を隣地(長男所有)との一体利用を前提とした評価
という理由があったからです。
そして、東京地裁は「前夫の鑑定額を隣地との一体利用を前提に
評価しなおすと、3億1,000万円~2,000万円になる余地もあり、
3億5,250万円が誤った額とまでは言えない」としたのです。
いかがでしょうか?
財産分与の場合、分与される財産の価額が和解調書に
明示されていないこともあります。
また、元妻が当該不動産を売却した場合、
元夫と元妻の確定申告を行なう税理士が別であることも普通でしょう。
原則的には「元夫の譲渡収入=元妻の取得費」となるべきですが、
これが大きくずれた事例として興味深いものだったので、ご紹介しました。
元妻の申告を受けた側であれば、
元夫がいくらで申告するかは不明です。
そういう意味から、これらが大きくずれ、否認指摘を受けた場合の
参考事例として覚えておいて頂ければと思います。
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2013年2月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。