貸倒損失の実務判断(総論)と注意点
※2022年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜まで7回にわたって「貸倒損失」、
特に取引先の破産と更正の請求について
解説してきましたが、今回が連載最終回となります。
そもそも論でいうと、貸倒損失の計上根拠は
法人税法第22条第3項第3号の「損失の額で
資本等取引以外の取引に係るもの」です。
そのうえで、貸倒損失が上記の「損失」に該当するのか
判断基準が曖昧であることから通達9-6-1~
9-6-3が基準の例示として規定されています。
貸倒損失が「損失」になるかどうかは、
(1)法的に債権が消滅した場合
もしくは
(2)法的には残っているものの実質的に
回収不能である場合
に該当するかどうかで判断するのが本論です。
通達9-6-1は上記(1)の例示であり、
通達9-6-2(および9-6-3)は
上記(2)の例示と考えれば理解しやすいです。
実務上、貸倒損失の計上で難しい問題として
(1)もしくは(2)に該当するのかを主張し、
立証するのは納税者側の責任という点です。
特に、上記(2)を主張する場合、
相手方が無資力であることの根拠や、
何度も督促した履歴を残す必要があるのは、
この立証責任の論点があるからです。
また、取引先の破産などを後になって知った
場合など、貸倒損失について当期の損金とするか
更正の請求をするか判断に迷うのであれば、
更正の請求をすべきでしょう。なぜなら、
下記のような【期ズレ時効】が最もリスクだからです。
(Nー3)期における取引先の破産を当期に知った
⇒
当期=N期の貸倒損失として損金処理
⇒
3年後である(N+3)期に税務調査が入った
⇒
N期の貸倒損失が(Nー3)期の計上として
期ズレで否認された
⇒
(Nー3)期は6期前であり税務上時効(永久差異)
今月2日に配信した「破産を事由とした貸倒損失の
更正の請求をする場合の注意点」でも書きましたが、
結果として、更正の請求が通らなかった場合
=「更正をすべき理由がない旨の通知」を受けた場合
であっても、不服申立てをせずに、当期に
債権放棄(債務免除)するなど、貸倒損失として
計上処理できる可能性があります。
このようなケースでは、更正の請求をする
リスクやデメリットがなく、むしろ更正の請求を
しなかったために時効=貸倒損失が永久に
損金にならないという大きなリスクが生じます。
5年以内の期ズレであれば修正申告+減額更正
によって加算税部分だけがリスク(損失)ですが、
5年超となってしまうと「貸倒損失で更正の請求を
しなかった(間違った判断で当期処理をした)」
税理士事務所の責任=税賠リスクは多額になります。
最後の論点となりますが、取引先に対する
売掛金等が滞留した際に、分割払いなど許容する
代わりとして、個人の(連帯)保証人を入れて
もらうことが実務上よくあります。
このようなケースで、その後に取引先が破産したが
(連帯)保証人がいる以上は、貸倒損失が
計上できない(通達9-6-2の適用がない)
と勘違いしている場合が多いです。
下記、国税庁の質疑応答事例に明記されている通り、
「No.5320 貸倒損失として処理できる場合
(連帯保証人がいる場合の貸倒れの判断)」
(連帯)保証人が無資力であるなど、実質的に
回収が不可能の場合、貸倒損失は計上できます。
「(連帯)保証人がいる=貸倒損失は計上できない」
というわけではありませんので、注意が必要です。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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