貸倒損失:「事実上の貸倒れ」の論点・注意点
※2020年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
本メルマガ6月19日配信では、通達9-6-1の
「法律上の貸倒れ」について解説しましたが、
今回は9-6-2「事実上の貸倒れ」です。
前回からの繰返しになりますが、9-6-1は
法的に債権が消滅したことを前提にしており、
一方で9-6-2は、法的に債権は
消滅していないものの、【実質的に回収不能
であることが見込まれる場合】に税務上の
貸倒損失になるかどうかの基準ということで、
根拠・前提としては全く違うものです。
実務上は、9-6-1もしくは9-6-3
を根拠とすることが多いわけですが、これは
9-6-2における「債務者の資産状況、
支払能力等からみてその全額が回収できない
ことが明らかになった場合」という
基準が非常に不明瞭だからです。
ですから、否認リスクを考えた場合、
9-6-2を根拠とせずに、できれば
9-6-1(さらにいえば「債務免除」)
を適用することをお勧めします。
9-6-2の解説をしながら、元も子もない
話になりますが、9-6-2の適用は、
判断とする事実と、その明らかになった
事業年度を主張・立証するのが困難です。
9-6-2の適用範囲・ケースとしては、
例えば「相手方が事業をしていない」
(事業所閉鎖・行方不明・天災事故等
を含む)が考えられます。
関連書籍などでは、相手方の「債務超過」
なども事由に挙げられていますが、
債務超過の事実を確認する術はほぼなく、
また、いつ「その全額が回収できない
ことが明らかになった」のか不明確です。
9-6-2を適用する場合の注意点は、
通達に記載ある通り、
・「その全額が回収できないこと」
・「担保物を処分した後」のみ可能
であることと併せて、
【貸倒れとして損金経理】
が要件となります。
6月12日配信「貸倒損失:後になって
破産手続終結を知った場合」では、
9-6-1適用の場合、更正の請求が
できる旨を解説しましたが、9-6-2は
法的に債権は消滅していないことから、
あくまでも税務上の貸倒損失として
認められるためには損金経理が必要で、
更正の請求は認められないことになります。
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