貸倒損失:「形式上の貸倒れ」の論点・注意点
※2020年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
前回の本メルマガでは、通達9-6-2の
「事実上の貸倒れ」について解説しましたが、
今回は9-6-3「形式上の貸倒れ」です。
実務上は、貸倒損失の計上根拠とすることが
多い通達かと思いますが、9-6-2と同じで
適用範囲が曖昧・不明瞭な規定です。
税務調査ではよく調査官から
「督促しましたか?」「いつですか?」
「何度ですか?」など聞かれますが、
あくまでも通達の規定上は回収の努力を
問うていないことから、そもそも
この問答が必要かすらもよくわかりません
(立証責任の観点からは理解できますが、
少なくとも通達には規定がありません)。
また、国税庁の質疑応答事例では、
9-6-3の適用を認めていない
ケースとして下記があります。
9-6-3を適用する場合の注意点は、
「売掛債権(売掛金、未収請負金その他
これらに準ずる債権をいい、貸付金
その他これに準ずる債権を含まない)」
に限定されていることと、「継続的な取引」
でないと認められないことでしょう。
「継続的な取引」がどの範囲なのかも
不明瞭ではありますが、下記の国税庁
質疑応答事例が参考になるでしょう。
さらに、9-6-3の適用根拠として
「取立てに要する旅費その他の費用」
を主張するケースもあるかと思いますが、
これは実質的に難しいと考えます。
この費用がどこまでかという点ですが、
「1回の集金のために出張に要する旅費、
日当等の実費(取立費用)に満たない
程度の債権金額かどうかで判断」
(「法人税基本通達の疑問点」より)
とあり、かなり少額な債権でもない限り、
これを根拠に貸倒損失にはならない
と判断されるでしょう。
最後に、コロナ禍は「災害」と認められる
こととはなっていますが、現時点では
9-6-3の適用があるわけではなく、
根拠とするなら9-4-6の2であって、
現在取り上げている貸倒損失の通達とは
別論点となりますので留意してください。
来週の本メルマガでは、貸倒損失に関して
その他論点について取り上げます。
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