貸倒損失:債務免除(債権放棄)する
※2020年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
本メルマガ金曜では、連載で「貸倒損失」を
取り上げていますが、今回は「債務免除
(債権放棄)」する場合を解説します。
まず、典型的なケースで考えてみましょう。
・相手方が破産・倒産などしていない
・時効年数は確実に徒過している
(10年前の売掛金であるなど)
・債務者は時効の援用をしていない
(音信不通で連絡先もわからない等)
・債権は実質的に回収不可能なので
今期で貸倒損失に計上したい
・ただし基本通達9-6-3に該当するか
自信はない(督促行為など長年していない)、
もしくは期ズレ・税務上の時効(5年超)
と否認指摘されるリスクが高い
このような前提で(利益がでた)今期に
「エイッ」と貸倒損失を計上するので、
税務調査では否認されてしまうわけです
(ちなみに貸倒損失を計上すれば
税務調査に選定されやすくなります)。
ここで、私がいつも理解に苦しむのが
「なぜ債務免除しないのか?
(しなかったのか?)」ということです。
貸倒損失が認められる考え方は、
「金銭債権が社会通念上回収が不可能と
評価できる事実が必要(課税要件)になる
わけですが、その基準が曖昧であることから、
実務上は法人税法基本通達9ー6ー1~3が
存在する、という枠組み」
だと「貸倒損失の総論」(3月27日配信)
で解説しました。
ですから、通達の規定内容を満たしているか
どうか判断する前に「社会通念上回収が不可能
と評価できる事実」を債務免除(債権放棄)
で明確にすればいいというわけです。
民法において、
民法519条
債権者が債務者に対して債務を免除する意思
を表示したときは、その債権は、消滅する。
民法第97条第1項
意思表示は、その通知が相手方に
到達した時からその効力を生ずる。
と規定されていますので、債務免除を通知
すれば、到達時に法的に債権債務は消滅し、
貸倒損失に計上することができます。
基本通達9-6-1では法律上の貸倒を
規定していますが、その(4)でも
債務免除は当然に認められているわけです。
とはいえ・・・債務免除(債権放棄)を
しても、税務上のリスクはゼロではなく、
「寄付金」認定される可能性もあります
ので、これについては次回解説します。
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