貸倒損失:後になって破産手続終結を知った場合
※2020年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週は通達9-6-1「法律上の貸倒れ」
について解説しましたが、今回は本通達を
適用するにあたり、相手方(債務者)が
破産手続等を終結したことを遅れて知った
場合の実務的な対応について解説します。
なお、9-6-1の適用範囲については
先週解説したとおり、「倒産法」全般に
適用があるわけですが、今回は実務上
最も多い「破産法」のみ取り上げます。
法律上の貸倒れに該当する場合において、
税務実務上よくあるケースとして、
「債務者の破産手続終結を知らなかった」
「後になって知った」ということがあります。
具体的には、破産手続に入っていたことは
破産管財人等からの連絡で知ってはいたが、
・破産手続が終結すれば管財人や弁護士
から連絡があるものと思っていた
・破産手続終結に関する通知を見ていない
(もしくは、通知が届いていない)
などの理由・事情が考えられます。
破産に関する貸倒損失の計上時期は
「破産手続終結の決定の日」と明確なので、
後になって知ったからといって、
知った事業年度の貸倒損失にはなりません。
破産手続終結がいつなのか知りたい場合は、
登記簿謄本(閉鎖登記)もしくは官報を
調べる必要があります。
また、後になって相手方の破産手続終結を
知ったとしても、5年以内であれば
更正の請求をすることができます。
債権が存在した状況から、法的に債権が
なくなった状況になったわけですから、
法人税法第22条の適用から、損失計上
できる(できた)ことは明らかです。
さらには、法人税法基本通達9-6-1
には「その事実の発生した日の属する
事業年度において貸倒れとして損金の額に
算入する」とありますから、貸倒損失は
損金経理要件ではないことから、
更正の請求をすることは可能なのです。
ただし、5年超(更正の請求の期間徒過)
している場合は、損金にはなりませんので、
残念ながらあきらめるしかありません。
ですから、税理士・会計事務所の実務としては
顧問先に長期滞留債権があり、
内容を確認したところ「破産手続きに入った
(らしい)」という情報があれば、
登記簿謄本(もしくは官報)で
破産手続終結の日を確認することです。
「法律上の貸倒れ」は外形要件を満たせば
確実に貸倒損失として計上できる一方で、
計上時期は一切の融通が利かないので
十分に注意する必要があります。
来週のメルマガでは、「法律上の貸倒れ」
について流れと計上時期を一覧で示し、
またそれらに関する注意点を解説します。
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