貸倒通達における損金経理とは何か?
※2023年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
今月上旬、ある税理士会の支部研修に登壇させていただき、
貸倒損失の税務調査論点についてお伝えさせていただきました。
研修後の質疑応答のやり取りにおいて「貸倒損失は多額でない限り、
雑費・雑損失などの他科目(販管費)に計上、もしくは
売上のマイナスとして処理することにしているのですが、
これについてどう思いますか?」と質問を受けたので、
「貸倒損失を特損で計上すると調査選定されやすいですし、
銀行の目が気になるようでしたら、そのように処理することでも
(税務調査では)問題はないですね」と回答しました。
さて、つい先日なのですが、これと同じ論点について
税務調査で否認指摘を受けている事案の相談を受けました。
・実質的に回収不能の売掛金(対個人・少額・多数)を
ある一定期間経過後、定期的に売上のマイナスで処理
・税務調査において、売上のマイナスでの処理は
貸倒通達9-6-2もしくは9-6-3における
「損金経理」に該当しないことから貸倒損失として認められない
(会計上で「貸倒損失」の勘定科目を使用する必要がある)
貸倒通達における損金経理の要件を解説する前に、
各貸倒通達の規定を整理しておくと、
●9-6-1「貸倒れとして損金の額に算入する」
=損金経理は要件とされていない
●9-6-2「貸倒れとして損金経理をすることができる」
=損金経理が要件かどうか判然としない
(昨年11月16日に配信しました「「通達9-6-2を根拠とした
更正の請求は本当にできないのか?」を参照してください)
●9-6-3「貸倒れとして損金経理をしたときは、これを認める」
=損金経理が要件とされている
とされています。そのうえで、貸倒通達における損金経理要件とは
具体的に何かといえば、「会計上(確定決算)において
費用又は損失として経理していなければ、税務上では
貸倒損失として認めません」ということです。
わかりにくいので簡単にいうと、当初申告において
費用・損失&損金としていなければ、後から
修正申告または更正の請求において貸倒損失を
追加計上して是正することは認められないということです。
9-6-3で更正の請求ができないのはわかりやすいのですが、
例えば税務調査において売上計上漏れが100あった場合、
貸倒損失を30認容して増差70にはできないということです。
話を上記の調査事案に戻すと、調査官の否認指摘は
根本的に間違っていて、当初から貸倒損失を売上のマイナスで
会計上処理している以上、(修正申告や更正の請求で
事後的に認めて欲しいという論点ではないため)
損金経理要件は満たしていることになります。
もう1つの論点である、貸倒損失の勘定科目として
処理していないことですが、損金経理を規定する税法
(法人税法第2条第二十五号)には「損金経理 法人が
その確定した決算において費用又は損失として経理することをいう。」
とあるだけで、勘定科目に要件はありません。
売上のマイナスであったとしても、収益のマイナス=損失以外の
解釈があり得ませんし、そもそも事後的な税務調整を
求めているわけでもありません。
実際に「法人税事例選集(令和2年11月改訂)」(清文社)
の737ページ「貸倒損失の損金経理について」の項目において、
「損益計算書に「貸倒損失」という費用又は損失科目が
計上されることまでは要求していません」と書かれています。
以上から、貸倒損失を会計上の他科目で処理していたとしても、
損金経理要件は満たしていることになります。
貸倒損失については、調査官がまったく理解していないことが
多いので、税務調査でも最も気を付けるべき論点です。
調査官の間違った否認指摘には適切に反論してください。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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