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2025.02.14

賃貸アパートの贈与に関する注意点(1)

※2024年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のテーマは、
「賃貸アパートの贈与に関する注意点(1)」です。

所得分散目的で利用されるスキームとして
1.賃貸アパートの贈与
2.賃貸アパートの法人化
があります。

例えば、賃貸アパートとその敷地を親が複数
所有しており、不動産所得を減らしたいという
オーダーがあった場合などでは、賃貸建物だけの
贈与を検討することがあるかと思います。

今回は、賃貸アパートの「贈与」に関する
注意点を取り上げます。

■論点1(負担付贈与の回避)
こちらは有名な論点です。
質疑応答事例にも掲載されています。
(賃貸アパートの贈与に係る負担付贈与通達の適用関係)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/14/08.htm

預かっている敷金の法的性格が
停止条件付返還債務(判例・通説)であり
建物の所有権移転があったとしても
旧所有者に差し入れた敷金が存在する
限りは、たとえ新旧所有者間に敷金の
引継ぎがなくても、賃貸中の建物の
新所有者は当然に敷金を引き継ぐ
(判例・通説)とされています。

そのため、敷金見合いの現金は贈与せず
「建物のみ」を贈与してしまうと、
建物に敷金返還債務をつけて贈与することに
なるため、負担付贈与通達が適用され
建物の評価額は相続税評価額ではなく
通常の取引価額(時価)によることに
なってしまいます。

仮に、負担付贈与となった場合、
贈与者側にも譲渡所得の課税関係が
生じる可能性がありますので注意が必要です。
(上記の質疑応答事例【回答要旨】(注)にも
 その記載がありますので、ご参照ください。)

簿価1円になった建物を贈与した場合、
消滅する負担(敷金返還債務)が譲渡収入
となるため、譲渡税の負担は生じる可能性
が残ります。

以上より、賃貸アパートを贈与する場合
敷金見合いの現金も併せて贈与することを
失念しないように心がけたいところです。

もちろん、贈与契約書にも見合いの現金贈与
をしっかりと記載しておくべきと考えます。

■論点2(贈与後の地代)
父が子に賃貸アパートを贈与した場合
子が父に権利金を支払うことは
実務上考えづらいかと思います。

贈与の目的が父の所得移転と考えれば
子が父に地代を支払うことは想定しづらい
かと思います。

つまり、土地については使用貸借契約
となりますので、使用貸借通達(第1項)
が適用されることになります。

使用貸借通達(使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/731101/01.htm

もちろん、土地の固定資産税相当額を
支払う場合でも使用貸借通達の適用は
可能です(第1項後段)。

ただし、親が子を甘やかせないために
地代をしっかり取るという考えをされる
場合もありますが、この場合には
相当の地代以下であれば、権利金の認定課税
(親に帰属する借地権が子に帰属する
 ことで、子に対して贈与課税)
される可能性が残ります。

この話は、父や祖父の土地の上に子や孫が
自宅を建築する場合にも当てはまります。
権利金の認定課税を回避するためにも
個人間では使用貸借であることが無難
かもしれません。

また、無償返還届出(法基通13-1-7)は法人が
絡んだ場合にて適用されるものですので
個人間での適用はありませんので、
注意が必要です。

次回も引き続き、
「賃貸アパートの贈与に関する注意点」
をお届けします。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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