賃貸ビル 兼 賃貸住宅の仕入税額控除
今回は「賃貸ビル 兼 賃貸住宅の仕入税額控除」です。
今日の事案は国税不服審判所の裁決(平成13年12月21日)です。
なお、TAINS番号は「J62-5-35」で、
裁決事例集第62集462頁にも掲載されているものです。
まずは、この事案の前提条件です。
○ 地上8階建の鉄骨造りの建物を新築(全て賃貸)
○ 課税売上割合は95%未満
○ 1~5階、8階の一部・・・店舗または事務所
○ 6~7階、8階の残りの部分・・・ワンルームマンション(共同住宅)
○ 建物に関する消費税につき個別対応方式を採用し、仕入税額控除を計算
→ 建物を面積按分し、消費税の課非を区分
○ 「個別対応方式は採用できず、一括比例配分方式で計算すべき」と否認
では、具体的内容の前に本裁決でも論点となった、消費税法基本通達を
みてみましょう。
(共通用の課税仕入れ等を合理的な基準により区分した場合)
11-2-19 課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して
要するものに該当する課税仕入れ等であっても、例えば、原材料、包装材料、
倉庫料、電力料等のように生産実績その他の合理的な基準により課税資産の
譲渡等にのみ要するものとその他の資産の譲渡等にのみ要するものとに区分
することが可能なものについて当該合理的な基準により区分している場合
には、当該区分したところにより個別対応方式を適用することとして
差し支えない。
では、具体的な国税不服審判所の裁決です。
○ 建物の利用実態に応じた各用途ごとの使用面積割合により、
建築費の課非を区分することは、各用途ごとの建築単価が
ほぼ同一であれば合理的
○ 建築費のうち大部分を占める基礎工事、駆体工事、外装工事等の費用は、
各用途に共通してかかる費用であり、その1平方メートル当たりの
建築単価は同一(これらの費用は、各用途ごとの使用面積割合による
課非区分が合理的)
○ 原処分庁は建物の設計概要書、各階平面図により、事務所等と
共同住宅の構造及び設備に明らかな差異が認められると主張するが、
審判所において試算したところ、
・事務所部分に要した金額:共同住宅に要した金額=おおよそ6:4
・事務所部分の面積:共同住宅の面積=おおよそ7:3
となり、それほど明確な差異はない
○ 共通の資産の譲渡等に要する金額(263,745,407円)が、
建築費の見積額(316,100,000円)のうちの大部分を
占めるので、使用面積割合による課非区分は合理的
○ 原処分庁は請求人が課税仕入れ等について区分を明らかにしていない
ことを理由に一括比例配分方式を採用するべきと主張しているが、
請求人は、建築費を共通の資産の譲渡等に要する課税仕入れとした上で、
使用面積割合により課非区分をしているから、
消費税法基本通達11-2-19に定める合理的な基準となる
いかがでしょうか?
事務所兼住宅の賃貸建物はよくありますが、その仕入税額控除の可否区分に
ついては構造上の違いもあるため、100%明確に建築費を区分することは
難しいものとなります。
また、この事案は計算根拠を添付して申告までしているにも関わらず、
否認の理由の1つに「区分を明らかにしていない」とされたものです。
皆さんの顧問先でも同様の事案があれば、
是非、この裁決を参考に按分計算をしてみてください。
なお、繰り返しになりますが、審判所の裁決文にもあるように「各用途ごと
の建築単価がほぼ同一であれば合理的」という前提があるので、
ご注意ください。
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2013年2月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。